青い瞳

金子よしふみ

第1話 あおいひとみ

 美しい、と言ってしまうとあまりにも普遍的過ぎます。「まばゆい」とは飾り過ぎています。その瞳の清々しさをどう形容したらよいのでしょう。

 マリンブルー、スカイブルー、……。色のグラデーションから選定される具体は確かに一つとなるのでしょう。

 そればかりでは足りないのです。そうです。これは衝動なのです。見入ってしまう。簡単に言ってしまいます。それは喉が渇いて口からあふれるというのに飲み物をあおった時とか、喉に詰まると分かっているのに頬張ってしまう空腹の時とか、くたくたになっていても深夜番組のために目をこすっているのにまどろんでそのまま寝落ちしてしまった時とか、頭では重々理解しているのに他にどうしようもなく行為が結果してしまうようなものです。

 サファイアの瞳。そうです。宝石と同等の瞳です。そればかりではありません。丁寧語の隙間から漏れる、どこかの訛りがなまめかしく、その瞳に輝きの肥えになっています。青い瞳。そこに針を刺したい。その結果は傷をつけた、ということになってしまいます。それは破壊活動とか、他の人に見せないための独占欲とか、そんなささいな感情ではありません。ただひたすらに、そのくすみのない瞳に刺したい。眼球をくりぬくなんて野蛮な行為はしません。舐めるなんて下品な行為はしません。刺したい。刺したい。針で刺したい。衝動です、願望や切望などでは到底抑えられないほどの。それでも行為しないのは一つです。刺してしまえばもう刺せないからです。二度機会があるとはいえ、二回しかないとも言えます。食事や睡眠や性を二回で済ませられましょうか。

 だから、せめてこの気持ちを読んでいただきたいと思ったのです。

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