第20話
「おはよう、白河さん」
少し早めに着いたと思ったが、先に白河さんが来ていたようだった。
相変わらず髪はボサボサで前髪は目にかかっている。
それにしても、白河さん小さいな、ギターに背負われているようだ。
失礼なので絶対口にはしないけど。
「中に入って飲み物でも飲んでようか」
「あ、はい」
そのまま2人で休憩スペースに移動する。
そうだ、白河さんに聞きたいことがあったんだった。
「白河さんちょっとだけいい?」
「白河さんのお父さんのバンドってもしかしてこれかな?」
俺がスマホで映像を見せる。
そこにはギターを天高く掲げるギターの男性が映っていた。
「はい、エンドオブヒーロー、お父さんのバンドです」
10年ほど前にインディーズシーンで爆発的に人気となったバンド。
そのままの勢いでプロに転向することになる。
だがプロになったからには自分たちのやりたい曲よりも売れる曲が求められる。
そしてプロになってから伸び悩みはじめると同時に、いやなウワサが流れることとなる。
それがパクリ疑惑。
正直、曲を聴き比べてもそこまで似ているとは思えない。だがウワサが出てしまってはもう止められない。
エンドオブヒーローはパクリバンドだという印象がついてしまったのだ。
そこからは早かった、周りからはパクリバンドとしてウワサは広がり、もはや解散するしかないという状況に追い込まれた。
そして、夢も希望も失った白河さんのお父さんは酒に溺れるようになり……。
そこまでが一般的に知られているこのバンドの顛末だ。
お父さんがそんな状況になっても、白河さんはギターの練習を辞めなかったのだろう。
いつかお父さんの教えてくれたギターをみんなに聴いて貰うために。
お父さんは凄いんだって、世の中に知らしめるために。
「わたしのお父さんはパクリなんてしていません」
白河さんが真剣な顔でボソッと呟いた。
直後、灯火と未来がスタジオにやってきた。
「あ、あの今日はよろしくお願いします」
白河さんが灯火と未来に丁寧にあいさつをする。
「よろしく、改めて俺は天宮雪兎、こっちは三澄灯火と希崎未来、俺と灯火は二年生だから一個先輩かな」
「よろしくね、白河さん」
灯火も挨拶を返す、どこか小動物をみるような感じ、印象は悪くなさそうだ。
「未来は同い年だけど、見たことはないのか?」
未来はぱちくりと瞬きをして、
「まあ、同じクラスではないですねー、クラス違うとなかなか話す機会もないですし」
「あ、わたしは知ってます、中庭ライブすごかったです!」
白河さんが未来を見る目が輝いている、未来はかなり恥ずかしそうだ。
顔が真っ赤になり身もだえている。
「うぅー、あのライブやっぱりみんな見てたんだよねぇ」
そうこうしていると前のバンドが終わったようで練習室から出てきた。
「宜しくお願いしまーす!」
スタジオのスタッフさんに挨拶をして練習室の中に入る。
まあ手慣れたもので、俺はベースのセッティングをはじめ、灯火もドラムの調整を始める。
白河さんも慣れているようで、ギターのセッティングを進めていた。
なんかエフェクターボードを見せてもらったが、俺には何がなにやらよくわからなかった。
「じゃあ、とりあえずやってみますか」
チッ、チッ、チッ、チッ。
ドラムの4カウントから曲に入る。
白河さんもギターを弾き始める。
うまい、ギターに関して俺の曲は特別変わったアレンジはしていない。
だが、白河さんが弾くギターからはとても正確な音が奏でられている。
惜しむべくはテンポだろうか、緊張しているのかやや走り気味だ。
しかしそれ以外は特に問題はない、正直俺は驚いていた。
じゃーん、曲が終わる。
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