第17話

そして俺たちの中庭ライブは終わった。



ライブの後、勇気を振り絞り処女宣言した未来は女の子達に囲まれていた。

どうやらウワサを流した男はやはり、他の子にもちょっかいを出してはウワサを流す常習犯だったそうだ。


日頃の素行の悪さも相まって、少し前に退学になっていたらしい。俺はほっとしていた。




ほかの女の子からは、


「めっちゃかっこよかった!」


「今まで大変だったね、やりチンは撲滅しましょう!」


「男なんて気持ち悪いだけだわ、これからは一緒に百合の世界にまいりましょう」


……まあなにはともあれ、どうやらこの話はいい方向に向かったようだ。



俺が控室のほうで休んでいると、未来が隣にちょこんと座る。


ねぇ、センパイ。


「勇気を出せば、人生って変わるんですね」


未来が隣でボソッと呟く。




「え?なんて?」


「なんでもないでーす!」


「……また気持ちいいこと、しましょうね!センパイ!♡」


コイツはまたウワサになりそうなことを、と思いながら。……よく頑張ったな。と心の中でつぶやいた。

――


「お疲れっしたー!」


ライブ終わりにファミレスで打ち上げ、4人ともライブの熱が残っているようでかなりテンションが高い。


「いやー、いきなりの処女宣言、お姉さんびっくりしちゃった!」


「なんか感極まったといいますか、気づいたら叫んでました、はい」


未来が恥ずかしそうにうつむく。

でも後悔などはしていないようで、結局のところスッキリしたんだろう。


俺としてもあれはかなりびっくりした、かなり動揺してしまったのは内緒だ。

どうしようかと思ったがうまく曲に入れてよかった。


「なんかあの後、クラスの女子たちがみんな謝ってくれて」

「別にみんなが悪かったわけじゃないのに」


未来が泣きそうな顔でそう語る。



「これからは学校来てねって言ってもらえて、わたし本当に嬉しかったです」


これは未来が勇気を出した結果だろう。


俺も少し手助けはしたが、未来が頑張って手に入れた結果だ。

公園で出会ったときはこんなことになるなんて思ってもいなかった。


「みなさん!本当にありがとうございました」


未来が泣きそうな、でも晴れやかな笑顔でそう告げる。



ああ、この笑顔を守れてよかった。

心の底から、俺はそう思った。



――

その後、灯火から聞いた話だが、一年生の中にかなり可愛い女子が現れたらしく。


「付き合ってください!」


男子が頭を下げ右手を差し出す。


「ごめんなさい!わたし、好きな人がいるので」


といったやり取りが校舎裏で何度も繰り広げられていたという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る