第4話 最終試験
◆
闘技場の上の伊集院 麗子の前に、23名の合格者がずらりと並んでいた。
「おめでとう。二次試験を勝ち上がった受験生の諸君。 次の最終試験に『勝った者』が合格となる」
「『勝った者』……ってことは……また誰かとカードバトルをするのか?」
天空からの問いかけに、麗子は不敵な笑みで。
「御名答。目の前にいる、この『私が対戦相手』だ」
合格者たちに動揺が走った。
「君たちの持つ最強のデッキを使い、カードアカデミアのナンバー2 伊集院 麗子。このわたしを倒せた者が合格となる……」
焦った様子で1人の受験生が歩み出る。
「で、でも、それってチャンスは『一度』だけじゃないんでしょ? あなたに勝てるのって、ここでは生徒会長だけなんだから。さっきみたいに、あなたのデッキに挑戦して観察して、弱点を見極めるのが試験の目的なんでしょ? 負けても何度か挑めるチャンスはあるのよね?」
きっぱりとそれを否定する。
「一度切りだ。それに観察しても無駄だ。デッキは毎回 別のモノを使わせてもらう」
「そ、そんな……」
絶望しきった表情でうなだれた。
「そんな ついでに言わせてもらおう――。わたしに挑み負けた場合、このカードアカデミアへの入学試験は二度と受けることはできない――」
「なッ! なんですってェッ!」
「入学試験は年2回ある。次に賭けて、今回の試験を見送るのも手段の内だ」
「1人も受からせない気ですか!」
激昂する少女の言葉を肯定する。
「ああ、そうとおりだ。君たちも知っているだろう? 前回の試験がゆるゆるすぎて通常の倍以上の合格者が出た事を。 今回の試験は1人も合格者を出さなくてもいいと理事長に言われたよ。 君の自由にやれと。――さあ、戦う意志がある者は、このわたしの前に立て……!」
間髪入れずに天空が歩み出た。
その行動に麗子はわずかに動揺している。
「……まさか、君が一番最初に挑んでくるとはな……予想外だよ……」
無邪気な笑顔で天空は。
「オレが一番に あんたと戦いたいからな」
熱い瞳で見つめられ、麗子は落胆した様子を窺わせる。
「……対戦相手ごとにデッキを変えるつもりだが、まずわたしの戦いを観察して分析し、デッキの傾向や戦術の偏りを見つけ、その弱点を突くデッキを組むのが 君のやり方かと思っていたが……君らしくないな」
気迫のこもった顔つきで宣言する。
「いいや、オレらしいですよ! オレは元々こういう男です!」
わずかに戸惑ったあと麗子は嬉しそうに微笑んだ。
「……君は……氷のような冷静さと、炎のように熱い心を持つ男だな……」
そして、熱い瞳で見つめ返す。
「いいだろう、大空 天空――! いざ尋常に勝負!」
最終試験――。運命を決める戦いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます