第6話 門番とポーションと、現実の街 その2

街の中に入ると、一気に賑やかな音が耳に飛び込んできた。


「りんご〜、新鮮なりんご〜!」

「鍛冶屋だよ! 剣も斧も磨くよ!」


露店が並び、商人たちが声を張り上げている。人々が行き交い、子どもたちが笑いながら走り回っている。

そして——俺は目を疑った。


「獣人……?」


犬の耳と尻尾を持つ男性が、荷物を運んでいる。その隣には、猫のような耳を持つ女性が野菜を売っていた。


「マジで、ファンタジー世界だ……」


感動と驚きで、俺は立ち尽くした。


「おい、邪魔だぞ」

「あ、すみません!」


後ろから声をかけられ、俺は慌てて道の端に寄った。


「とにかく、商業ギルドだ……」


俺は門番に教えられた通り、街の中央に向かって歩き始めた。石畳の道、木造と石造りの建物、旗が揺れる広場——全てが新鮮で、心が躍る。


やがて、目の前に大きな建物が現れた。


三階建ての立派な石造りで、入口には『商業ギルド』と大きな看板が掲げられている。


「ここか……」


俺は深呼吸をして、扉を開けた。

中は広々としていて、カウンターがいくつも並んでいる。奥にはテーブルと椅子があり、何人かの商人らしき人々が談笑していた。


「いらっしゃいませ」


カウンターの向こうから、柔らかい声が聞こえた。

顔を上げると——そこには、美しい女性が立っていた。


金色の髪を後ろで結び、青い瞳が優しく俺を見つめている。白いブラウスに紺色のベスト、清潔感のある制服姿だ。


「ようこそ、商業ギルドへ。ご用件をお伺いします」

「あ、えっと……新規登録、したいんですが」

「新規登録ですね。承知しました。こちらへどうぞ」


受付嬢は笑顔で、俺を奥のカウンターへと案内した。


「では、まずお名前からお聞かせいただけますか?」

「田中陽斗です」

「タナカ……ヒナト様ですね。珍しいお名前ですね」

「あ、はい……」


受付嬢はペンを取り、書類に何かを記入し始めた。


「それから、ご職業は?」

「ポーション職人……です」


瞬間、受付嬢の手が止まった。


「……ポーション、職人?」

「はい」


彼女は驚いたように、俺の顔を見つめた。


「本当に……ですか?」

「本当です」


俺はベルトからポーションを取り出し、カウンターに置いた。

受付嬢は瓶を手に取り、じっくりと観察した。そして顔を輝かせた。


「これは……素晴らしい品質です。ヒナト様、もしよろしければ、詳しくお話を伺ってもよろしいでしょうか」

「はい、もちろん」


俺の異世界生活が、ここから本格的に始まろうとしていた。


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