帳尻

ゴルゴンゾーラしずえ

序章

人間の一生には、誰にでも同じ数だけ試練が与えられている。どんな大富豪でもホームレスでも本当に皆平等に訪れる。

降り注ぐ試練の大小、タイミングは人それぞれだが最終的には必ず帳尻が合うようにできている。


体育祭。それは学生にとって大きな要素を占める。

個々のステータスを元にクラス内でジャッジし合い、なんとなくクラスのヒエラルキーができて、自分の立ち位置やつるむメンツも鮮明に、ラブコメ要素なんかも入ってきて。

学生という名の青春を致死量に詰め込んだようなイベントである。


『現在赤団の独壇場!次の走者はアンカー!

青団も食らいつきます!』


放送委員の低クオリティの実況が飛んでくる。

若さの特権、高い位置でのポニーテールなんか

せず、下の方で髪を一つに結び、赤いハチマキをしている高校2年生飯沼翠(いいぬますい)は

現在トップを走るアンカーへとこのバトンを繋ぐべく、クラスの熱い期待の中一生懸命走る。

 

クラスの50mタイム表を見ながら独壇場で決めてった体育委員の前川君には反省してほしい。

一番燃え上がる後半走者。クラスで息を潜めている私からしたら団員全員から送られる熱い期待と視聴率が一気に集まるこの状況、

大変迷惑である。


でも、私は知っている。

今年度初となる私の帳尻。

私はバトンを渡す直前に



『ズサ。』



盛大にコケるということを。

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