桜井の想いと嫉妬とパンツ
桜井が……苺に憧れている!!?? にわかには信じられない話だった。
「どういうことだ? 桜井はクラスのアイドルだろ、むしろ苺が桜井に憧れていそうだけど」
「私は……消極的な性格だから。みんなは『逆に庇護欲湧いて可愛い』って言ってくれるけど、やっぱりもっと積極的になりたくて」
「……」
「飯津さんは明るくて可愛くて行動力があって……あんな風になれたらって思うの。だから飯津さんの彼氏の下北君に聞けば、秘訣が分かるかなって思って……ごめんね、何だかちょっと騙しちゃったみたいで」
……こういう健気で優しいところが、桜井が人気な理由なんだろうな、決して見た目だけじゃない。苺っていう彼女がいなければ、俺とて惹かれていたかもしれない。
「秘訣なんて大袈裟なものは分からないけど、あいつにとってそれが自然体なのが良いんだろうな」
「自然体?」
「あいつは自由気ままに飛び回っている時が一番楽しそうだし、俺もそんな苺を見ているのが好きだ。好かれようと思ってそうしてるんじゃなくて、ありのままの自分を楽しんでいる苺を自然と周りは好きになっているんじゃないかな」
「……」
「桜井は穏やかで話してて安心出来る、そんな魅力を持っていると思う。人それぞれ魅力は違って当然なんだから、俺は今のままで良いと思うけどな。みんな今の桜井が好きだから、クラスで人気があるんだろうし」
「……ありがとう」
何だか柄でもないことを言ってしまったような気がするけど、本音だ。苺の明るさや破天荒さは苺だからいい、逆に桜井の穏やかさは桜井だからいいんだ。
「やっぱり下北君は優しいよね……人気者の飯津さんに釣り合わないとか言う人いるけど、私はそうは思わない」
「おおお……そんなこと言われたの、初めてだぞ」
「飯津さんが羨ましい……」
「ん?」
「私ってズルいな……下北君の優しさに付け込んで、もしかしたら……って考えちゃって」
桜井は何を言っているんだ? 何だか悩んでいるみたいだが……しかし可愛いな、乙女の顔っていうか。桜井クラスの美少女がこういう顔するのは反則だろ。
「……やっぱり、こういうのはダメだよね。ごめんなさい下北君、今日はこんなことに付き合わせちゃって」
「別に構わないが……どうしたんだ、さっきから」
「それは……!!?? こほっ……こほっ!!」
「お、おい桜井、一体……って、こほっ……こほっ!!」
何だ……急に煙っぽくなってきたような。それに……妙に……眠気が。
***
「ん……ここは……桜井の部屋だよな? 眠っていたのか?」
見たところ桜井はまだ起きてない、俺の目の前で眠っている。美少女の寝顔はやはり良い……じゃなくて!! 一体何が起こったんだ? まさか……
ピコン♪
計ったかのように、スマホのLIPAの着信音が鳴った。やはり苺からか、内容は……
『桜井さんのパンツの柄、桜だったよ。大和撫子な桜井さんにぴったんこ♪』
「……」
『さっきの煙みたいなの、お前の仕業か?』
『そうだよ、睡眠ガス』
『いや……お前女子高生だろ、どうやって手に入れたんだよ』
『敬君、今の世の中、その気になれば何でも手に入るんだよ♪』
……まあ、ツッコんでも無駄ってことか。しかし、問題は……
『桜井……今履いてるのか?』
『履いてるよ、タンスから拝借しただけだから。てか……浮気者、ラブコメ禁止!!』
『はい……』
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