第5話
『005』
出発するにあたって馬車で移動が決まっているが、エマの侯爵家が用意した馬車ではなかった。
「馬車が私を待っていたのかな?」
「お待ちしていましたエマ様」
「あなたは誰?」
(知らない男性だわ)
「私はクローゼ辺境伯の執事をしています、トーマスです。エマ様を無事にクローゼ辺境伯邸まで届けるのが仕事です」
「頼んでなかったけど」
「エマ様が一人では大変に危険な道でございます。魔物が出ますので私がお守りします」
「それはありがとうトーマス。よろしく」
執事が一緒に乗ってくれる馬車での移動となった。
執事というには若い男性で、エマよりも少し若いくらいの男性。
黒髪で肌は白い。
(ハンサムなイケメンな執事だわね。一緒なら安心します)
トーマスの馬車で出発。
エマはちょっと安心した。
なぜならクローゼ辺境伯は冷たい伯爵だと聞いていたから。
しかしエマのことを心配してくれていると思うと嬉しい気持ちになる。
「嬉しいです。クローゼ辺境伯は私の身を心配していて、それで執事を送ったのなら優しさを感じます」
「安心してください。出発しましょう」
馬車に乗って移動し、王都からかなり遠いとされる辺境のヘムステルダム町に向かう。
馬車ではトーマスと向き合っていた。
顔が綺麗な顔をしていて、目が合うとドキッとした。
(日本で言うと、男性アイドルみたいな感じ)
服装は黒いスーツに白いシャツで日本の執事のイメージ。
(きっと日本で町を歩けば、女子は見てしまうな)
トーマスと一緒なので馬車での移動は不安はなくなった。
街道を走り草原を抜けると、森に入った。
森は特に魔物が多く出る。
「エマ様、馬車を停車させます。魔物が出ましたので。ここでお待ちください」
「トーマスは戦えますの?」
「はい、私は元騎士団ですので」
トーマスは剣を持って馬車から降りる。
エマには心配ないですと笑顔であったが、エマは本当に大丈夫なのかと思う。
馬車から外を見ると、魔物がすで馬車を囲っていた。
(トーマスだけで大丈夫かしら。元騎士団て言ったけど)
エマは馬車から心配する。
そんな不安なエマを驚かす戦いになる。
トーマスは魔物10匹に囲まれると、剣で切り裂いたからだった。
一瞬だった。
魔物はその場に倒れ討伐し、トーマスは笑顔ではなくて、鋭い戦いの男の顔だったからエマはドキッとした。
(凄い! まるで高ランクの冒険者みたいだわ!)
「もう大丈夫です。討伐しましたから」
「強いのですね。驚きました」
「騎士団はクローゼ辺境伯が団長で、私は部下でした」
「クローゼ辺境伯も強いのですか?」
「私よりも強いです」
「頼もしいです」
トーマスから聞いたら、クローゼ辺境伯はもっと強いと。
今のトーマスよりも強いとはエマの想像した伯爵とは違った。
伯爵といえば貴族なのであって、どちらかと言うと領地経営をするイメージ。
王都の貴族も戦闘をするのは珍しい。
エマの中でクローゼ辺境伯の妄想が膨らむ。
(強い伯爵。そして冷血な伯爵。どんな人なんだろうな私の婚約者は)
♢
辺境とは国の領土でも田舎というイメージで、実際に来てみると本当に広大な森があって周囲は草原がある光景があった。
(王都の都会とは大違いで、自然が多いわね)
町は王都と違い規模は小さくて、町の人口は少ない。
ここが日本ならスローライフな生活とか言えるが、異世界でスローライフができるのかは未知である。
周囲はかなり危険な魔物が多くいるし、馬車も教われるもトーマスが討伐してくれる。
いつ魔物に襲われるか怯えながら生きていくのは大変そうだと頭には入れておく。
なにせ今までの王都には騎士団も揃っているし、優秀な歴戦の多くの冒険者も常駐しているから、安全は確保されてはいた。
小さな町になるほど、そういった魔物と戦う冒険者は少なくなるのは事実で、この町には期待できないのは否めない。
馬車がクローゼ辺境伯の家に到着した。
(緊張する。だって婚約者の顔も知らないんだもの)
家は立派な屋敷であり豪邸であった。
地方ということもあり土地が余っているし、豪邸なのも変ではない。
この豪邸にエマの婚約者が住んでいて、今日からここで婚約者と一緒に生活すると妄想すると緊張感は上がってしまう。
(冷血伯爵って本当かな)
しかも嫌味なレイチェル令嬢からの情報では、クローゼ辺境伯は冷血な冷たい男らしいと聞いている。
想像が膨らんでしまう。
クローゼ辺境伯と上手く生活できるのか、暮らしていけるのかと不安感が強くなってしまう。
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