第4話「ギルドからの正式依頼。魔物素材の大量持ち込み」

 ギルド調査班が店を去ってから、半日ほどが過ぎた。


 ツトムはレジ袋を何十枚も重ねて作った即席ベッドに倒れ込み、

 蛍光灯の光をぼんやりと見つめていた。


「……絶対、今日だけで売上ノルマ行ったよな……」


 そんな独り言を吐いたところで、休息はあっという間に終わる。


 ウィーン。


 おなじみの自動ドアの音。


「……え、また……?」


 入ってきたのは、ギルドの受付嬢と冒険者十名ほど。

 その中心で、筋肉の塊みたいな男が、ツトムに向かって深々と頭を下げた。


異世界商店スーパー・ツトム殿!

 ギルド本部より正式依頼を持参した!」


「その店名いつ決まったの!?!?」


 ツトムのツッコミは、自動ドアの向こうへ虚しく吸い込まれた。


 受付嬢が書類を取り出し、真剣な声で読み上げる。


「依頼内容は“魔物素材の買い取りを希望する”」


「は?」


 ツトムは聞き間違いかと思った。


「理由その一。

 魔物素材をギルドに持ち帰るより、この店で買い物して支払う方が、

 冒険者たちの精神が安定するため」


「スーパー依存症かよ!?」


 受付嬢は淡々と二つ目の理由を続ける。


「理由その二。

 こちらの食品を摂取した冒険者の戦闘力が、

 一時的に“平均十五パーセント向上する”ことが確認されました」


「絶対カップ麺とポテチのせいじゃん!!」


 そして三つ目。


「理由その三。

 調査班の評価によると――

 “この店のレジ係は恐ろしく有能”」


「俺はアルバイトって言ってるだろおお!!」


 受付嬢が手をひらりと合図した。


 冒険者たちが左右へどくと、

 床いっぱいに積み上げられた巨大な荷袋が姿を現した。


 牙、爪、革、角、魔石、スライム核――

 ざっと数百点はある。


「本日、これらすべてを買い取っていただきます」


「全部!? いや無理!! 無理無理無理!!」


 その瞬間。


 ピンポン。

 《買取モード、強制起動》


「また勝手にィィィ!!」


 ツトムの体が勝手に動き出す。

 魔物素材を一つずつレジ台へ運び、

 高速で仕分け、査定し、値段を叩き出す。


 レジスキャナーの音が、まるで連射の銃撃のように響いた。


 ピピピピピピッ!!


「し、信じられないスピード……!」

 受付嬢が震えた声でつぶやく。


「ツトム殿……魔導自動機か何かか?」

 冒険者の一人がぽつりと呟いた。


「違う!! ただの人間!! ただの深夜バイト!!」


 アナウンスは無慈悲に告げる。


《皮・牙・魔石は買取レート上昇中》


「相場操作すんなあああ!!」


 何百点もの素材を査定し終えた後。

 受付嬢が改めてツトムの前に立つ。


「ひとつ、伺いたいのですが……

 買い取った素材は、この店で何に使うのです?」


「それ俺が聞きたいんだけど!?」


 ところがアナウンスは淡々と言った。


《魔物素材は店内設備の補修に使用されます》


「補修!? 何に!?」


《特に冷凍庫は魔物の冷気核で稼働しています》


「えええええ!?!?」


 ツトムの叫びに、冒険者たちはざわつく。


「つまり……魔物を倒すほど店が強化される……?」

「なんだここ……魔王城か?」


「なんで俺、魔王城みたいなの維持してんの……?」


 ツトムの心は折れかけていた。


 受付嬢は書類を胸元で整え、きっぱりと宣言する。


「ギルド本部の決定が下りました。

 《スーパーマーケット・ツトム》を、

  ギルド公認の補給拠点とする」


「勝手に拠点指定すんなぁぁ!!」


 冒険者たちは満面の笑みで親指を立てる。


「ツトム殿! これから毎日来るぞ!」

「割引の日はないのか?」

「次は遠征部隊も連れてくる!」


「それ絶対地獄の常連制度だよね!?!?」


 こうして、ギルドは正式にツトムの店を利用し始め、

 異世界の物流と戦力バランスはじわじわと変化していく。


 そして。

 本日の売上は店史上最高を記録し、

 ツトムの疲労も同レベルで更新された。


 異世界スーパーマーケット地獄は、

 まだまだ始まったばかりだった。



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