第3話「ギルド調査班、強制ショッピング地獄へ」

 ルガートが商品袋を抱えたまま慌てて去っていったあと、ツトムはレジ台に突っ伏した。


「はぁ……ルガートさん、ごめん……」


 ただ尋問しに来ただけの人が、スープ缶やポテチを山ほど買って帰る羽目になるスーパー。

 完全に地獄である。


 だが、その地獄はまだ序章にすぎなかった。


 数時間後。


 自動ドアが「ウィーン」と開く。


「失礼する! ギルド第三支部・調査班だ!」


「はやっ!?」

 ツトムの悲鳴がレジ横に響く。


 入ってきたのは、武装した冒険者3名、ローブ姿の学者2名、そして書記3名。

 合計8名。明らかに“本気の調査班”である。


「こ、こんなに来なくても……!」


 調査班のリーダーらしき男が堂々と名乗りをあげた。


「私は第三支部調査隊長ラッカス! 本日はこの商店の機能、危険性を徹底的に……」


 ピンポン♪

 《来店者の購買行動を開始します》


 ラッカスは固まった。


「……は?」


 次の瞬間、調査班全員の体がピタッと止まり。

 そして、バラバラの方向へ駆け出した。


 武闘派冒険者は肉コーナーへ。

 学者たちは調味料棚へ。

 書記はなぜかポテチとカップ麺を爆速で両手に抱え始める。


「し、身体が勝手に……!」

「これが魔導店の呪いか!」

「未知の薬品……いや“ソース”か!?」


 瞬く間に店内はカオスと化した。


「えええぇぇぇぇ!!? 一気に8人!?」

 ツトムの悲鳴が天井にこだまする。


 調査隊長ラッカスは冷凍食品の前で目を見開いていた。


「こ、この箱の中……肉が凍っているだと? しかも、炎の魔石も氷の魔石も使わずに……?」


「それ、冷凍庫です……」

「れい……? 霊塔……? 霊が封じられた塔のことか?」

「全然違います!!」


 調味料コーナーでは学者が震えていた。


「未知の香辛料が……数十種類……。値段は……銅貨? 安すぎでは……!」


「スーパーだから……」


 書記たちはカップ麺の裏を必死に読み取る。


「こ、これは魔法陣か!? 湯を入れて三分待つと完成……? 本当に?」

「ただのカップ麺です!!」


 しばらくして、全員のカゴがパンパンになったころ。


 ピンポン♪

 《会計へお進みください》


 調査班が揃ってビシッと振り返る。


「「「レジへ……!」」」


「軍隊かよ!!」


 8人が整然と列になり、カゴを差し出す。

 ツトムの腕はまた勝手に動き始めた。


 ピッ、ピッ、ピッ……!

(いつもの3倍速レベルの高速レジ打ち)


「な、なんだその速さは……!?」

「俺も知らないんですけどおおぉ!!」


《高速会計モード発動中》


「そんなモードある!??」


 金貨・銀貨・魔石が次々と積み上がり、商品が吸い込まれるように会計されていく。


 全員の支払いが終わったあと。


 ラッカス隊長が紙袋を抱え、改めてツトムの前に立った。


「……ツトム店主(※勝手に店主扱い)。本日の調査で、我々は確信した」


「なんですか……」


「この店……“危険すぎるほど便利”だ……!!」


「村どころか王都の商人たちがひっくり返ります!」

「調味料と保存食品の価値……測り知れません!」


 学者も書記も真剣そのものだ。


「ついては、ギルドと正式な協定を結んでほしい!」


「いや俺アルバイトなんで……」


《交渉権限はレジ係に委任されています》


「またそれぇぇぇぇ!!」


 ラッカスはツトムの手を握り、叫んだ。


「ツトム店主! あなたは異世界の商業を変える人物だ!」


「アルバイトですうううぅぅ!!」


 そして。


 ギルド調査班は、紙袋を山ほど抱えて帰っていった。


 ツトムの売り上げは跳ね上がり、

 同時に胃痛も跳ね上がる。


 異世界スーパーマーケット地獄、加速開始である。



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