カンパニュラ

@magnet07

プロローグ

──きっと、あのとき素直になれていたら。


静かな別れの電話から始まる、ひとつの恋の記憶。

ふたりのすれ違い、言えなかった言葉、残された思い。

時間が経っても、忘れられない人がいる。

それはきっと、後悔ではなく「誠実な愛」だったのかもしれない。


「思い出は美化されるもの」だと言うけれど、

それでもあなたにも、忘れられない誰かがいますか?


部屋に飾られたカンパニュラの花が、

もう一度、心を揺らす。



【プロローグ】


「私ね、子供ができたの。だから……あなたとはもう会えない」


スピーカー越しのその声は、冬でもないのに氷柱のように胸を突き刺した。


子供ができた喜びとは、少し違う空気を纏いながら、彼女の声は震えていた。


4年近く続いた関係は、その一言で、あっけなく終わった。


なぜ彼女の声が震えていたのか。

僕には、少しだけ心当たりがあった。

そして、それは後悔となって、ゆっくりと胸に沈んでいった。

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