この作品を異世界ファンタジーと片付けるのはもったいないと思ってレビューします。
少女期、私を読書好きにしてくれたのは、シャーロック・ホームズやエドガー・アラン・ポーのようなミステリーだけではありませんでした。
例えば、アンを迎えたマリラの葛藤。
精霊の守人のバルサの生きざまでした。
この作品を呼んで、久しくそのような読書をしていないことに気付きました。
上流階級の傲慢さ、養い後を慈しむ母の姿。
不思議な運命を背負った少女。
日常に潜む「悪意」や「心の闇」を、市井の人々の視点から丁寧に描く情感あふれる作品で、夢中になって読めます。
母親の亡骸にくくりつけられ、海を彷徨っていた少女ビビ。
奇跡的に助けられた彼女には、恐ろしい刻印がなされており……
謎めいた少女の存在を中心に、最初は比較的静かに展開していく物語は、読んでいくうちに加速度的に面白さを増して、やめ時を失います。愛憎劇などがお好きな読者さんなら、止まらなくなること請合いです!
特筆すべきは、人物造形の見事さです。
美形、悪人、俗物、善人等々様々な人々が登場しますが、皆ご都合主義や表層的な性格付、言動ではなく、「ああ、こういう人いるだろうな」とか「こういうことあるだろうな」と思わせるキャラ造形が見事です。
そんな人々が生み出す物語だからこそ、実に説得力があり胸に迫ります。
同時に意外性も巧みに織り込まれ、彼らがどこに行き着くのか、この先も追い続けたいと思わずにはいられません。
また、どろどろしそうな展開でも、丁寧で抑えた筆致によって、読後感はむしろしっとりとした印象になる程、心に染みる文章も魅力的です。
●こんな方におすすめ
・緻密に構築された異世界に浸りたい
・説得力のある、リアルな人間ドラマが読みたい
・過去の因縁や関係性が紐解かれていく過程が好き
実は、最初に一話目を読んだ時、「寧」が人名だと勘違いして、一気に五人くらいキャラ出てきて混乱!と思いましたが……私がバカなだけでした。
万が一、同じように混乱しかけた方がいても(いるわけないか)、是非最新話まで読み進めていただきたいです。本当に、おすすめです。