第17話 1人目

 🤝 塔野、戦国の理性を手に入れる

​ 塔野は、現代で高性能ライフルとソフトポイント弾という**「究極の合理性」を確保し、戦国時代へと再帰還を果たした。彼は、自身が仕える今川義元**のもとに戻り、近江と美濃への侵攻計画をさらに完璧なものにするための準備を始めた。

 ​彼の最大の課題は、自身の**「冷徹な論理」を、戦国時代の「感情的な熱」が支配する環境で、いかに効率よく実行に移すかだった。彼は、健斗や犬山のような「感情の介入」**を排除するため、完全に合理的で忠実な実行者を必要としていた。

🧐 孤独な狙撃者、雑賀孫市との邂逅

​ 塔野が最初の仲間を見つけたのは、紀伊国(現在の和歌山県)に勢力を持つ**鉄砲傭兵集団、雑賀衆さいかしゅう**の頭領の一人、**雑賀 孫市さいかまごいち**だった。

 ​孫市は、塔野が桶狭間の戦いで示した**「精密な情報分析と火力運用」に、独自の「合理性」を見出していた。彼の目的は、特定の武将に仕えることではなく、最も効率よく戦果を上げ、対価を得ること、そして鉄砲技術の究極**を追求することだった。

​ 塔野は、孫市に接触するため、今川義元の資金を使って、孫市が最も欲する**「現代の技術情報」**を餌にした。

​「孫市殿。貴殿の鉄砲は優れているが、それは未だ**『感情』に支配されている。私の持つ『知恵』は、それを『完璧な機械』へと進化させられる。貴殿の『命中率の合理性』と、私の『戦略の合理性』**を組み合わせれば、この乱世は一瞬で終わる」

 🔫 究極の合理性による契約

​ 塔野は、孫市に対し、現代の**「弾道学」と「銃器の設計思想」を説明した。そして、彼のソフトポイント弾ライフル**を見せた。

​「この火器は、私の**『論理』の結晶です。貴殿の火縄銃は、命中までに『時間』がかかる。それは『非効率』です。しかし、私の技術は、『一瞬で、遠くの目標を、正確に排除する』。これこそが、乱世における究極の合理性**です」

​ 孫市は、塔野の理屈と、彼が放つ銃の**「冷たい破壊力」に心底魅了された。孫市が求めていたのは、「勝利への熱」ではなく、「確実に勝利を収める技術」**だったのだ。

​「藤野殿…貴殿の言う**『合理性』は、我らが鉄砲の道に通ずる。無駄な労力、無駄な弾丸、無駄な命…全てを削ぎ落とし、ただ『標的を仕留める』ことのみに集中する。それが我らの『商売の道』**だ」

​ 孫市は、塔野のライフルと技術を対価に、今川軍の非公式な特殊部隊長として塔野の傘下に入ることを誓った。

​ 雑賀孫市は、塔野の最初の仲間となった。彼は、感情的な要素を完全に排除し、塔野の命令を最も効率よく実行する「冷徹な武力」の象徴だった。塔野は、この孫市を使い、まず美濃の健斗、そして近江の犬山を、**「無駄なく」**排除する計画を練り始めた。

 ⚔️ 塔野の論理と健斗の苦難

​ 塔野は、孫市に対し、美濃の斎藤家を狙う次の戦略を指示した。

​「孫市殿、美濃の斎藤家には、かつての同僚、**藤原健太(健斗)がいます。彼は『感情的な熱』で動くため、合理的な予測が困難です。しかし、彼には致命的な弱点がある…彼の『足の遅さ』と『座れない病』です。彼の策が発動する前に、その『足の遅さ』**を利用し、城下から追い詰めます」

​ 塔野は、健斗が痔の痛みに苦しみ、斎藤義龍に解雇されたことを知りもせず、彼の身体的な弱点を**「論理的な欠陥」**として利用しようとしていた。

​ 健斗は今、美濃の山中で、痔の激痛に耐えながら、「正法寺の天狗の調合薬」を求め、帰還の手がかりを探している。彼の探求は、塔野が美濃に送り込む「冷徹な武力」と、そして美濃の山中に潜む「黒い兜の鬼(喜平次)」の狂気の熱との、避けられない遭遇へと向かっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る