君と僕の時間が止まれば〜消失日記〜 【改良版仮】

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第1章 止まらない時間

この物語の主人公、上沢りくは小学校の時、不治の病にかかってしまう。病気のことを誰にも言わず家族にもいわない。時間だけは止まることなく進む。「もうこの世に未練はない。」世界は汚い。奪い、争い、騙す、そんな世界が嫌いだ。

 小学校に入学するころに父さんの映画に出させてもらった。自分には子役の才能があったらしい。映画が出ると一瞬で有名になり、映画はどれも大人気の作品になった。「天才子役」と呼ばれるようになったのもこの頃からだった。呼ばれかたも嫌いだった。

 映画に出るようになって演技も練習をはじめた。お母さんはIT企業の会社で働いていた。帰ってくるのは遅く朝は早かった。母さんは仕事が好きな部類の人で、父さんの収入だけで暮らせるから仕事をやめてもいいよと行ったらしいが、自分の分は自分で働てやるからいいと言ったらしい。父さんは家での仕事が多くいつも遊んでくれた。中学年になると父さん以外の映画にも少しずつ出るようになった。はじめは楽しかった。でもいつの間にか期待が大きくなり、それが重く感じるようになった。「次もいい演技をしたいと」「期待に応えないと」そんなことばかり考えながら演技していた。高学年の時の記憶はあまりない。だけどそれくらいに父さんがいなくなった。小6の時に不治の病にかかり、中学入学の時「届かない想い」という映画を最後に出て芸能界をひそかに引退した。どんな小学生よりも濃い小学校生活をしていたと思っている。中学生活は何もなく時間はよりはやく進んでいるように感じた。中学の卒業式、幼馴染の美月と写真を撮って帰った。家に帰ると妹の春が台所に立っていた。料理を作るのは春だ。母さんとはかれこれ半年以上あっていない気がする。家事も春と分担してやっている。高校に入ってからも何も変わることのない日常。

 その日常が変わり始めたのは高校2年、最後の1年

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