男の娘が女装して堕ちるまで

カステラ

第1話 はじめてのじょそう

「凪沙、お前女装してみないか?」


そう言われたのは、僕こと白藤凪沙しらふじなぎさ

私立青雲高等学校に通う一年生。

身長は150cmと男子にしては小柄で、悩ましいところだ。

目元は前髪で隠されていて、あまり見えなくなってしまっている。しばらく切ってないものだから、邪魔だとも思わなくなっているけど。

入学してから友達ができることもなく、今も教室の隅で本を読んでいたところだ。つまり、ただの隠キャである。


そして声を掛けてきたのは、僕の唯一の友達にして親友、広葉蒼翔ひろはあおと

コミュニケーション能力が高く、入学してから一か月ですでにクラスの中心的存在となっている。本来僕とは違う世界に生きている人間だが、幼稚園の頃からの幼馴染なのでいつも話しかけてくれている。


「急にどうしたのさ、蒼翔。ていうか、なんで女装?」

「いや、最近見たアニメにすっげぇハマっちゃってな。んで、そのアニメに出てくるキャラ

の顔がお前と似てんだよ。だけどそのキャラ

女でな。だから、女装してくれ。コスプレセ

ットはもう用意してるぞ」


まぁ、事情はわかったけど、それはそれとして....


「いや、なんで僕が受ける前提で用意してんの

さ。言っとくけど、僕は女装なんかしないよ」

「そこをなんとか!ハーゲ◯ダッツ奢ってやるから!」

「女装するくらいならジュースなんていらな

いよ...」


流石に女装するのは嫌だ。流石のハーゲ◯ダッツでも釣り合わない。せめて、僕の大好きなメロンパンを10個くらい貰わないことには...


「メロンパン15個買ってやるから!」

「...」


どうしよう。メロンパンくれるらしい。しか

も15個も。とりあえず、そのキャラがどんな

感じなのかくらいは、見てからでもいいかもしれない。


「そのキャラってどんな見た目?」

「お、もしかしてやってくれんのか!?ちょ

っと待ってな。えぇっと...これだこれ」


そう言ってどうやらそのキャラを画像検索し

たらしい蒼翔のスマホの画面を見てみると...


そこには、メイド服を着ている可愛らしい少女が写っていた。いや、やっぱりやめておこう。普通の女装ならまだしも、メイド服はハードルが高すぎる。


「やっぱり、やめとく。メロンパン15個

は惜しいけど、メイド服は流石に恥ずかしい」

「くそっ、ダメかぁ。お前前髪長くて目立たないけど、結構から似合うと思ったんだけどなぁ」


え。


「今、なんて言った...?」

「え、いや、お前可愛いから似合うと思ったっ

て」


...可愛いか...

男なのに可愛いって言われちゃったよ。

なんだろう、この感覚...なんか、こそばゆい

ような.....


「メロンパン、20個くれるなら、女装してあげても、いいよ...?」

「いいのか!?よっしゃぁ!それにしても凪沙、お前ほんとメロンパン好きだよなあ」


メロンパンは神だ。あれに勝る食べ物なんてこの世に存在しない。まずあの中はふわふわ、外はカリカリというあの王道の食感が素晴らしい。そしてバターがふんだんに使われているとより素晴らしい。あの濃厚で甘い香りを嗅ぐと否が応でも食欲がそそられる。たまに、メロンパンのクッキー生地とパン生地が同じ生地で作られているものを見かけるが…あれは、邪道だ。絶対に許せない。メロンパンに対する冒涜だ。メロンパンはあのバランスだから素晴らしいのだ。そのバランスが崩されているなんてありえない。


それはともかく、どうしよう...

勢いで女装するとか言っちゃったよ...


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そして時は流れ、放課後。


「広葉、今からゲーセンいかねぇ?」

「広葉くーん、カラオケいかない?」

「すまん、今から凪沙と遊ぶ予定あるから行けねぇわ、また今度なー」


相変わらず蒼翔は人気者だ。それに対して僕はきっとこの先蒼翔以外と話すことはないんだろう。まぁ別にいいんだけど。

それよりも今は女装だ。どうしよう。メロンパンの力で乗り切るしかないか...


そんなことを言ってる間に、いつのまにか蒼翔の家に着いていた。蒼翔の家は僕の家のすぐ近くにある。その辺も幼馴染でここまで仲良くしてきた所以だろう。


「よし、それじゃあ早速...」


そう言って蒼翔が取り出したのは、フリルがいっぱい付いた、非常に可愛らしいメイド服と銀髪の長いウィッグと青色のカラコンだった。

いや、やっぱり恥ずかしい!


「うぅ...こんな恥ずかしいの着なきゃいけないの...?とりあえず、向こう行ってて」

「楽しみだなぁ、ついにリアルで見ることができる...!」


僕は制服を脱いで、メイド服を着てみることにした。白と黒のメイド服で、至るところにフリルが付いている。


「よいしょっと」


うわ、やっぱり恥ずかしい...ていうか、スカートってこんな感じなんだ...スースーする...続いてウィッグとカラコンも取り付けた僕は、鏡を見てみることにした。


そこには、青色の瞳に銀色の髪を束ね、メイド服を着ている、蒼翔のスマホで見たキャラクターそのものなが写っていた。

いや!僕男だから!


なにこれどうしよう!すごく恥ずかしい!

これ今から蒼翔に見られるの!?無理無理無理!恥ずかしすぎて死ぬ!


「そろそろ終わったか?入るぞー」

「うきゃ!?」

「おおおぉ!すげぇ!マジでそっくりだ!これだ!これが見たかった...!それにしても...お前ほんとによなぁ。普段は前髪で隠れてるけど」

「いきなり、開けないでよ...恥ずかしいじゃんか...」


うぅ...やっぱりすごく恥ずかしい...

でも...可愛いって言ってくれた...?

なんだろう...すごく...嬉しい。

どうしよう。僕は可愛いと思われるのが好きだったんだろうか。


「もう...二度とやらないから...」

「えー、もったいないねぇなあ。そんな可愛いのに」

「やっぱりやってもいいかも...」

「変わり身早!?もしかして...可愛いって言われるの、好きなのか?」

「ちっ、違うから!やっぱもうやらない!それより早く、メロンパン20個ちょうだい!」

「はいはい、わかったよ...もう財布の中身すっからかんになっちまった...」


それにしても...女装、楽しいかも...?

いや、僕は男だ。もう女装なんてしない。恥ずかしいし...


その日は着替えてすぐに家に帰り、メロンパンをやけ食いして、眠りにつくのだった。





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