第22話 急転直下NTR配信
「なっ……なっ……」
脳の認識が追いつかないまま、エステルは全身を震わせた。
「なああああああああああぁぁぁぁ————ッ!?」
わけが分からないまま、エステルは絶叫する。
配信画面に映っているのはジュリーと——まごう事なき、勇者様だった。
一緒にダンジョン配信をしよう、と。
エステルにそう言ってくれたはずのバートが今、自分以外の女性の隣で笑っていた。
『あ、エステル気づいたの?』
自身の配信に寄せられたコメントで、ジュリーも状況を
ジュリーがカメラ目線になり、ニヤリと笑ってピースした。
『いえーい! エステル見てるぅ? 今から勇者様と、初めてのダンジョン探索しちゃいまーす!』
その後ろでは、バートがダブルピースしていた。
〈バートさん寝取られてる!?www〉
〈エステル顔やばいwww〉
〈さっきまでウキウキ笑顔だったのにwww〉
〈
〈ダブルピース勇者様www〉
〈バートさん何やってんのwww〉
「な、なんっ、な、なあああぁ!」
〈エステル一旦落ち着けwww〉
〈変な鳴き声の生き物みたいになってるぞwww〉
〈
〈鬼の
視聴者たちがアレコレ言っているが、反応する余裕はない。
エステルは衝動のままにキーボードを叩きまくった。
『うわ、エステルから「ライライコール」きた』
緊張感のない楽しげな声で言いながら、ジュリーがスマホを持ち上げた。
ピロリン、ピロリンという電子音がそのスマホから聞こえてくる。
『ジュリーさん、ライライコールとは何ですか?』
『ダンジョン配信者向けのビデオ通話サービスです。ダンジョンライブとも連携できて、配信に通話内容を乗せる事ができるんですよ』
『なるほど、一緒にいなくても配信に参加できるんですね』
『ええ。ちなみに、正式名称は「ライフライン・コールサービス」です。「ダンジョン内で危機に
『まさに命綱なのですね』
『そうだ、バートさんもアカウント作りませんか? 番号交換しましょう』
『おおーぜひぜひ。帰ったらやり方教えて下さい』
「早く出ろおおぉ!」
着信を放置して仲良さげに会話を続けるジュリーとバートに、エステルはブチ切れた。
〈ガン無視www〉
〈可哀想www〉
〈エステル落ち着けwww〉
〈キャラ
『え? エステルがブチ切れてる?』
ジュリーがコメントを読んで苦笑する。
『しょうがないなぁ。あ、バートさん。そっちのスマホでエステルの配信開いていただけますか?』
『了解です』
バートに指示を出してから、ジュリーがようやく自身のスマホを操作する。
『もしもし、エステル?』
「何やってるんですかぁ!?」
ジュリーが応答するなり、エステルは怒鳴った。
『今からバートさんと一緒に、「灼熱の地底湖」を探索するのよ』
過去最大の怒りを込めたはずなのだが、ジュリーは平然と口元を緩めている。
どうやら、エステルの怒りは
エステルはめげそうになりつつも、必死で抗議の声を張り上げた。
「それは知ってます! そうじゃなくて、一体どうしてバート様とダンジョン配信をする流れになったのですか……!?」
『ああ。実はね、これには深いわけがあるのよ』
ジュリーが一転、真面目な表情になる。
急激な空気の変化に、エステルも思わず姿勢を正した。
「……深いわけ、ですか?」
『バートさんとの配信が決まったエステルが、本当に嬉しそうだったからさ。私、思っちゃったの』
ジュリーが真剣な
『ここでちょっかい出したら、面白い事になりそうだな〜って』
「全然深くない! むしろ浅すぎてびっくりですよ!」
あまりの下らなさにエステルは
「そんな自分勝手な理由でバート様を巻き込んだのですかっ!?」
『自分勝手じゃないわ。エステルファンのみんなも、こういうのを望んでいるのよ』
「そんな事ないですっ! ……ない、はず。多分、きっと……」
途中で何だか自信がなくなってきた。
昨日までだったらともかく、今日の昼間から視聴者たちのノリがかなり変わってしまった事は否めない。
さっきから視聴者たちが妙に静かなのも
『私がエステルの新たな魅力を引き出し、ファンのみんなはさらにエステルを好きになる。これが
「そ、そうなのでしょうか……?」
確かに、ジュリーの言う事も分かるような気はする。
視聴者たちを楽しませる事ができたのであれば、それは配信者
「そうなのよ。ね、エステルファンのみんな。エステルの新しい一面が見られて良かったでしょ?」
〈おう! ジュリー良くやった!〉
〈流石はエーオブディー・アイドルズのリーダーよ!〉
〈やっぱりジュリーが最高だって思ってたんだよ〉
〈今この瞬間からジュリーが一番好きになった〉
〈エステルからジュリーに推し変します!〉
〈すまん、さらばだエステル。待っててくれジュリー〉
「むしろ皆さんが私から離れてしまっていますがっ!?」
『あら、いらっしゃい。新規さんはいつでも
「やめてっ! これ以上私から奪わないでっ……!」
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