だって、メンヘラだもの。〜脳のバグコードを書き換え、私は残酷な世界を生き延びる〜
桃尻 刹那(ももじり せつな)
第1章
序章
人は、ときどき自分の頭の中で起きていることを、現実だと勘違いする。それは妄想というほど派手なものではなく、もっと地味で、もっと厄介だ。「もうダメだ」「終わった」「嫌われたに違いない」そんな言葉が、事実確認もされないまま心を占拠し、身体の操作権を奪っていく。
この物語は、そうした思考に飲み込まれやすい人間の内側を、少し距離を取って眺めてみる試みである。誰かを断罪する話でも、正しい生き方を教える話でもない。ただ、「頭の中で何が起きているのか」を、ファンタジーの皮をかぶせて描くだけだ。
主人公の名は刹那。昼間は勇者業――といっても、剣を振るうわけではない。彼女の仕事は、数字を揃え、書類を整え、間違いがないかを確認する、極めて現代的で静かなものだった。だが、彼女の内側では常に別の戦いが起きている。思考と感情が絡まり合い、どちらが自分なのかわからなくなる戦いだ。
刹那は、自分が「弱い」とは思っていない。むしろ、これまで何度も折れそうになりながら、生き延びてきたという自負がある。ただ一つ困っているのは、頭の中の声が大きすぎることだった。その声は善悪を決めつけ、未来を断定し、彼女を眠らせない。
この物語に、魔物が出てくるのはそのためだ。それらは外敵ではない。刹那の中で生まれ、膨らみ、彼女を疲弊させる「考えすぎ」の化身である。
もしあなたが、「わかっているのに止められない」「考えなくていいことほど、考えてしまう」そんな経験を持っているなら――この物語は、あなたを壊すためではなく、距離を取るための地図になるかもしれない。
これは回復の物語ではない。もっと正確に言えば、回復を急がない物語だ。まずは眺めること。飲み込まれずに、気づくこと。
刹那の物語は、そこから始まる。
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