静かな語り口の中に、やさしさと痛みが折り重なっていて、読んでいるあいだずっと胸の奥がひそやかに揺れていました。世界の大きさと、そこで生きる一つ一つの存在の小ささが対比されるようで、印象が深く残ります。プネドラーの行動、姿勢そのものが物語を動かしていて、読後には自然と「思う」時間が生まれました。書き連ねられている言葉は、読み手の感情に余白を残してくれているように感じられ、心地よかったです。最後まで読むと、静かに空を見上げたくなるような、そんな一編でした。
「愛がほしい」と泣いた鯨のために、空を駆けた。雨が降り、命が救われ、世界が静かに感謝をささやく。天の川の橋を渡る鵲の羽音が、彼の眠りをやさしく包んだ。