不死兵(アンデッドウォーリア)
三日三晩続いた砂嵐が止み、砂漠の地下迷宮への入口が現れた直後、王は即座に探索隊を編成し調査に向かわせた。
しかし、彼等は迷宮に入った後、誰一人として戻ってくることはなかった。
探索隊の生命を奪ったのは迷宮に住まう怪物ばかりではない。真に恐ろしいのは呪われた迷宮の瘴気であった。
黄泉の入口に繋がると噂される迷宮の深部からは、淀んだ瘴気が霧のように漂ってくる。
十分に心身の鍛錬を積んだ者でも、迷宮に足を踏み入れれば瘴気による悪寒を覚える。下の階層に潜るほどその影響は強くなり、力量不十分な者はパニックや痙攣で身動きが取れなくなってしまうのだ。
100人あまりの探索隊の多くが地下3階の瘴気で行動不能となりそのまま命を落とした。残りの一部は怪物に喰われたか、それとも深層に歩みを進めたか…
瘴気は弱者をふるい落とす反面、強者には更なる力をもたらす。長い間、瘴気にさらされれた皮膚は硬化し、血は湧き立ち、食事を取らなくても長時間活動できるようになる。瘴気が媒介となり、地上の生物の体組織を過酷な迷宮の環境に耐えうるように順応させるのだ。
深海魚のように深層の圧力に適応した者は、すでに人ではなく、もはや瘴気の薄い地上に戻ることは叶わない。
一方、瘴気に冒されて倒れた弱者には、さらにもう一段階の選別が待っている。
脆弱なる者の魂は瘴気に食い尽くされ、朽ちゆく体のまま生者を襲う
だが幸いにして(もしくは不幸にして)、比較的丈夫な心身を持っていた者は、死してなお強靭な魂が瘴気を退ける。彼等はただの死体として迷宮内の食物連鎖に組み込まれ、おぞましい大百足や大蟻の群れがその肉を食い漁り、数日で骨だけにしてしまう。
肉を失って弱りきった魂に、ようやく瘴気が取り付くと、骨だけの体で迷宮をさまよう
微かに魂の欠片を残す彼等は、骨の髄まで叩き込まれた生前の剣技を使いこなす強力な守護者として、迷宮の上層を永遠に彷徨う。
さて、君は…どちらだろう。
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