第6章 SE、狼を狩る。

「さてとだ。」


戦士レオが焼きキノコを頬張りながら話し始めた。


俺は助けてもらったお礼に、周囲で食べられるキノコを採取し、

みんなに振る舞った。


焚火で炙るだけで味が劇的に変わる。

調理の威力ってすごい、とこのとき初めて思い知った。


レオはもぐもぐしながら言う。


「俺たちはオオカミを狩らねぇとならん。

 これが今回のミッションだ」


僧侶リオンが柔らかく微笑んで続ける。


「そうだな。昨夜はマイトの救出が優先で、

 オオカミを逃がしてしまったからな」


魔法使いルナも苦笑いしながら焼きキノコを頬張る。


「気にするな、マイト。

 うまいキノコにありつけたからな」


俺は申し訳なく頭を下げるしかなかった。


レオは気に留める様子もなく、周囲を見回しながら呟く。


「……しかし居場所が分からん。

 夜におびき寄せるしかないか」


ふと、職業病のように思考が働く。

──課題があるなら、解決策を導く。それがSEだ。


昨夜撮影したオオカミの写真。

あれに何かヒントはないか?


スマホ を開いて確認すると、

オオカミの詳細なステータスが表示されていた。

戦闘力や魔力に加え……

なんと“寝床の位置を示す URL”が書かれている。


「これだ……!」


俺は即座に URL を開き、GoogleMap で経路を検索した。

数秒後、森の奥の位置と道順が表示される。


「なるほど、これで向かえば間違いない」


ルナは目を輝かせ、

リオンは優しくうなずき、

レオは感心したように肩を叩いてきた。


こうして俺は、

スマホ を駆使してオオカミの寝床まで案内する役割を果たした。


「やるじゃねぇか、マイト」


レオの言葉に、少しだけ胸が熱くなった。


***


昼過ぎ、俺たちは森の奥深く──

オオカミの寝床に到着した。


薄暗い茂みの中で、狼たちが丸くなって眠っている。


「マイト、ここからは隠れていろ。絶対に姿を見せるな」


レオの低く冷静な声に、俺は固くうなずいた。

心臓は早鐘のように打ち続けている。


三人は自然な動きでフォーメーションを組んだ。

先陣のレオ、後方支援のリオン、遠距離攻撃のルナ。


「行くぞ」


レオの一声で戦闘が始まる。


狼たちは突然の襲撃に飛び起き、唸り声をあげる。

レオが剣を構えて突撃し、一匹を体当たりで押し倒す。

重装鎧が衝撃を吸収し、狼が地面に叩きつけられた。


リオンは杖を掲げる。「減速阻害呪文(ボミエ)!」

聖なる光が狼の動きを鈍らせる。


「メラ!」

ルナの炎が茂みを照らし、狼たちを威嚇した。


三人の連携は完璧だった。

狼は次々と倒され、森に静寂が戻る。


「やったな」


レオが汗を拭い、

リオンは穏やかに微笑み、

ルナは興奮で目を輝かせていた。


俺はただ、圧倒されて見守るしかなかった。


***


──その瞬間だった。


静まり返った森に、

地響きのような遠吠えが響き渡る。


「……なんだ、あの声は?」


茂みの陰で息を呑む。


木々の間から現れたのは、ひときわ巨大な狼。

群れの頂点──ボスだ。


その体躯は森の光を遮るほど巨大。

鋭い牙、燃えるような瞳、歩くだけで地面が震える。


「くそっ……こんな相手かよ……!」


レオが剣を握り直す。

だが、さすがの彼も警戒を強めていた。


次の瞬間、

ボス狼がルナに飛びかかる。

ルナは杖を構えたが間に合わず、

凄まじい衝撃で吹き飛ばされる。


「ルナ!」


リオンが「ボミエ」を唱えるが、

俊敏すぎる狼にはほとんど効かない。

リオン自身も爪を受けてよろめく。


レオが体当たりを仕掛けるも、

逆に鋭い一撃を受け、鎧がひび割れた。

血が滲み、呼吸が荒い。


三人は次々に重傷を負い、

戦況は一気に絶望へ傾く。


ルナは倒れたまま動かない。

リオンも立つのがやっと。

レオは必死に庇う姿勢を取るが、

体には深い傷が刻まれている。


ボス狼は勝利を確信したように、

ゆっくりと歩み寄ってきた。

その影がレオを覆う。


──次の一撃。

おそらく、三人とも耐えられない。

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