夢の途中で
「はぁ、」
ボフッとベッドに飛び込めば、着たままの制服がグシャリとシワを作る。
薄暗い部屋は、ゲームのコントローラーやら、カセットやらが散乱していた。
「ぁあ゙ーため息したら幸せが逃げる……てか、もう逃げてるわ」
沙羅にネットニュースを見せられると同時にマネージャーからかかってきた電話。
内容はもちろん、私以外のメンバー二人のパパ活疑惑だった。
二人は契約解除、グループは解散することに。
私のこの先は決まらないままだ。
契約解除は「無い」らしいけれど。
行く末は何も決まらないまま。
ピコン、ピコンとスマホが絶えず通知を告げる。
シワになったシーツに、伏せたままのスマホの光が滲んでいる。
Pop Loveがバッシングを受けているのは、マネージャーから聞いた。
「通知はオフにしなさい」とも「余計なものは見ちゃダメだから」とも言われた。
どうせいいことなんてないのに、手は私の言うことを聞いてくれずに、枕元に投げ出したスマホを乱雑にひっくり返してしまう。
ポコン、ポコンと増え続ける通知。
見ないでもわかる。バッシングだ。
「結局媚び売るだけかよ」
「残された子、可哀想」
「せっかく可愛かったのに」
「センターの子も活動やめんの?」
「なんだかんだ、量産型アイドルだから」
「典型的などこにでもいるアイドル」
ひどい、なんて言葉も湧かない。
典型的?量産型?そんなの、自分でもわかってる。
「せっかく人気になってきたグループだったのにね」
「センターの子、今ごろ抜けた二人に呪詛でもしてんじゃね?」
「可哀想」
「芸能人生終わり」
「そもそも、こんなアイドルいたんだ」
あっという間に拡散されていくそれに、どうしても目を逸せない。
一言一言が、グサリと胸を抉るみたいで。
無理矢理、スマホの電源を切った。
暗い画面に映る自分は、意味もなく大きく描いた涙袋に、キラキラのアイシャドウ、盛りに盛ったチークとリップ。
無理やり上げたまつ毛と、貼り付けたような笑顔。
ありふれた、高い位置のポニーテール。
本当に、真っ先に連想する典型的なアイドルだ。
あっという間に埋もれて忘れられてしまう、大勢のうちの一人。
「こんなふうに、なりたかったわけじゃないんだけどな」
スマホを枕の方に投げれば、不恰好に放物線を描いて落ちた。
「ご飯!」
リビングから、母の声が聞こえた。
「はーい」
適当に返事をして、スマホから目を逸らす。
勢いよくヘアゴムに手をかけてポニーテールを解けば、普段は引っかかりやすい癖毛が今日は一本も絡まらなかった。
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