第一章 4話 「逢魔時」
「まさか、このわしとやり合うつもりか?」怪異は上から言い放つ。
白生はまた一歩踏み出し「僕には到底及ばないと思うけど?」「なんだと?」怪異は見るからに怒りの形相に変わる。「貴様みたいな小僧がわしに勝てるだと?笑わせるッ!!」言葉の終わりと同時に鋭い爪を持つ腕が、白生目掛けて飛んでくる。
戦闘は始まった。
ドゴッ!!ォオオオオオオオオ!!!
怪異の腕が地面に当たる。
砂煙が舞い、嵐のように風が吹き荒れる。
「ほう、これを避けるとは、小僧貴様慣れているな?」「まさか、こんな野蛮なことに慣れるわけないだろ。」白生は余裕を持って返答する。
言葉は慣れていないと言うが、その体捌きは身のこなしは確実に修羅場を通ってきた経験からくるものだ。連続して飛んでくる怪異の攻撃を難なく避け、白生は考える。
「一応名乗っておいた方がいいかな?僕は白生翔廻、奇譚を集めている者だ。」「なるほど、そういうことか、その慣れた動きは集めながらわしのような怪異や妖を相手にしているようだな‥‥」怪異は冷静に白生の言葉を理解し分析する。
「名乗ったんだ、アンタの名前を教えてくれると助かる。」「わしは、赤舌。そこらの奴と同じだと思うなよ小僧。それにわしの名を覚えたとて意味はない。貴様はここで死ぬのだからなぁあ」ニタァと薄気味悪い笑みをして告げる。
「その言葉そのまま返すよ、僕の名前を覚えなくていいよ。」「なにぃ?」
冷たい目をして白生は「アンタはここで祓うよ。何人も人を殺したんだ。改心しそうな感じでもなさそうし。仕方ない。」ゆらゆらと白生の体を纏う何か。
「やはり、貴様は術師か。さっきまで何も感じなかったがかなりの魔力を持っているな。」「魔力を探知できるのか。今まで色んな怪異に会ってきたけど、探知できるのは数少ないよ。」「簡単なことよ、魔力を持った者を喰えば、この能力は身につく。」口の端から唾液を垂らしながら続ける「魔力を持った奴は美味い。あの味を知ったらもう、それしか喰えん。腹持ちもいいしなぁ」「なるほど、最近、いやここ数年何もここで事件や怪現象が起きてなかったのは、そういうことか。」
「あぁ、最近は魔力を持った者が少なくなってなぁ‥‥腹が減ってきたんで、少し暴れてやればお前のような術師が来ると思ってなぁ」「なるほど、魔力を持った者を食べると知恵もつくようだね。」「そろそろ本気で行くぞ、小僧ぉ。お前のような魔力を持った奴を喰えばまた数年は腹が減ることはなくなりそうだぁ。」
「白生ぅ‥‥さん。」蹲る彼女は力をふりしぼって白生を見つめる。その目は恐怖をしている目ではない。「この状況で僕の心配をするとは、君は優しいね。でもさっき言った通り、大丈夫だよ。」
「よそ見してる場合か!!?」
赤舌は大きく口を開け、真っ赤な舌を勢いよく飛ばす。
ズドッ!!!
「!!?白生さぁん!!!」絶叫する彼女の目に映る白生は手を前に出し。
「大丈夫、長話も終わりだ。赤舌」
前に出した手のひらの少し前で舌が止まる。
「ふぁんだ(なんだ)、ほれは(それは)?」
「見てわかるだろ?それともこんな事も知らないのかい?」冷たく言葉で引き離す。
ブチィ!赤舌の何かが切れる。
「小僧ォオオオオオオオオ!!!」
「終わりだ、赤舌。」
ギャルルルルル。手のひらの前で膨大なエネルギーが溜まっている。
颯のように突っ込んでくる赤舌に向かって。
放つ。
無色の弾丸。
ゴォオオオオオオオオ!!!!!
「なんだ‥‥この威力は‥‥あり‥えん‥」
赤舌の眉間に弾丸が接触する。
「ウギャアぁぁぁあああ!!!!」
ブッワァアアア!!霧散する赤舌。
霧散する赤舌と同時に断絶していた世界が日常に戻る。
「ふぅ、なんとかおわったね。」
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