第一章 3話 「誰そ彼」

 授業も終わり下校時間になった。


近くの喫茶店で時間を潰した白生は再度、この学校に踏み入れる。昼間に来た時は微かだが、雰囲気が違う。


校門のすぐ近くにあるグラウンド


「黄昏時、または逢魔の時とも言うのかな‥」夕焼け空を見上げて呟く。

そこに彼女がやってきた。


「白生さん、お待たせしました。」と言い一礼して挨拶する。

本当に昼間の約束通りに来るとは思わなかったが、仕方ない彼女も連れて捜査を開始するほかなかった。


「この学校には七不思議も奇譚もないとなると、この違和感はなんなんだろう。本当になんでもいいんだけど何かこの学校でおかしな現象が起きたことを聞いたこととか現象に遭遇したことはないかい?」

「いえ、私は聞いたことも遭遇したこともないですね。」


白生は、うーんと考え込みながら「でも、確かにこの学校に何かがありそうなんだ。この違和感は確実にあるんだ。」


「違和感、ですか?」「まぁ本当に勘みたいなものだよ、伝承や奇譚が無いとなると探しようが無い。だけど‥‥」「だけど?」


「昼と夜が入れ替わるこの黄昏時、又は逢魔時おうまがときと呼ばれるこの時刻は、魔物や怪異といった人外に遭遇しやすく、災禍を蒙る《こうむ》と信じられてきた。」「魔物に怪異ですか‥‥」少し引き攣った顔をして彼女は白生を見る。


「まぁ、いきなり言われても信じれないよね。僕はそういった異界との繋がりを持つもの達の伝説や怪異譚を集めているんだ。」言葉は自然と出た「なぜ?」「異界に行く方法を探しているんだ。笑っちゃうよね。こんなことを本気で言うなんて」頭を掻きながら少しはにかみながら白生は続ける。

「と言っても、人生を賭けたり危険を冒してまでは探してはいないんだけどね。趣味に近いかな。人助けするのも悪く無いし」

「そうなんですね‥今回はどのようなものが関係しているんでしょうか?やはり怪異などなのでしょうか?」

呆気に取られた顔をして「今の話、信じてもらえるとは‥‥ハハッ」「今回の件は怪異だと思う、この時間に来て、昼間に感じた違和感が強くなっているし、それに増えてる。」「え?」彼女の大きな目がさらに大きく丸くなる。



「この時間になって怪異が現れたと思う。それに昼間のと違ってこの怪異は危険だ。」「どこにいるんですか?私には少しも感じません‥」少し怯えて話す彼女に白生は「僕の存在を勘づいたようだ、探さなくてもこっちに向かってきている。僕の側から離れないで。」「はいっ」力強く頷く。


「この現世にいる、今現在怪異や妖と言われる存在は人間に牙を剥くことはそうそう無いことなんだ。」「今回の怪異は‥‥」「そうだね、簡単に言えば人間と一緒さ、大半は日常を営む者が生きているけど、犯罪を犯す者もいる。」「良い怪異もいれば悪い怪異も存在するってことですか?」「そう言うことだね。その犯罪も大小あって悪戯レベルでちょっかいを出す程度の奴もいる。」

「なんだか、面白いですね。」

白生は真面目な顔をして「今回のは、かなり危険な怪異だね。人を殺したことがある怪異だ。」

「!?、、、、え?」バッと白生の方に首を曲げて反応する。


「今まで、君が遭遇しなかったのが不思議なくらいさ、距離が近づくたびにそう感じるよ。」



空気が変わる、グラウンドで部活を行っている生徒達の声や音が消えた。


まるで世界が変わったような。






ズキッ


ズキズキッ


突然の事だった。



頭部に急激な痛みが襲う彼女はうずくまるしかなかった「うぐぅ!?」「来たか‥‥」黒いもやが立ち込め、2人の一定の範囲内が外界と断絶された。


「ほうほう、貴様か。」品定めするかのように白生を見る、顔は毛深く、鋭い爪を持つ手、黒い雲に覆われた獣のような全身像が掴めない、一目見れば理解せざるを得ない。


こいつは現界には存在し得ない存在だ。


「そこに転がってるのも中々‥」蹲る《うずくま》彼女に視線を移し呟く怪異。


その言葉に彼女は目線を怪異に当てる。


「、、、!、?」彼女から言葉は出なかった。


様々な思考が颯爽し、処理する事に注力するしかなかった。



白生は一歩を踏み出す。



「すまない、危険な目に合わせない筈だったのけど思った以上に力を持った怪異だ。少しの間辛い思いをさせるけど、すぐに終わらせる。」







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