第一章 2話 「遭遇」

 ガツガツムシャムシャ!!

 昼休みの教室ひとつのクラスで音が鳴る。普通では鳴るはずのない咀嚼音と食器の音。不思議と嫌悪感が出ない食事のメロディ。メロディを奏でる人物は男子高校生ではなく女子高生である彼女、ゆうきである。

 

「おおしくぉえでこぉのおとのぢゅぎょおおもぐわぁんばあるぞお!!(よぉし!これでこの後の授業もがんばるぞ!)」

 「相変わらずアイツの食いっぷりはすげぇな‥‥」「俺たちの二倍食ってんぞ‥」近くの男子達は見慣れた光景であってもやはり異常な量の食糧。

 

 一人のクラスメイトが呟く、「誰だあれ?」廊下の方に目を向けて呟くクラスメイトの視線の方に目を向けると、授業中に見たあの青年が歩いていた。

 

「あれって‥‥」

「なんだ、お前の知り合いか?」近くの席の男子が問いかける。「別にそういうわけじゃないんだけど、授業中に校庭で見かけて‥」そう呟きながら青年を眺める。

 

  「とりあえず、この階で最後かな?今のところ何の異変もなさそうだけど‥‥」辺りを見回しながら白生はポツリと呟いた。

 

 白生の視界に一つの教室の入り口が映り込む。


 瞬間的に感じた。異変、微かだが確実に雰囲気が違う。「なるほど、そういうことか」白生は一人で納得してこの先のことを考える。

「あのー…」考え込んでいる白生の下から覗き込むように尋ねる女子高生がそこにはいた。

 目が合うと、「何かお困りごとですか?」と尋ねてきた。

「まぁ困ってるかな、君はこの学校の七不思議とか伝承とか詳しい?」

 白生の唐突な質問に困惑しながら、「七不思議?いやぁ聞いたことないですねー。もしかしてそういった現象を調べにこの学校に来たんですか?霊能力者とかお祓い屋さんなんですか?」

「別に霊能力者でもお祓い屋でもないよ、只の探偵だよ。」「探偵!?すごい!!初めて見ました!」「全然すごくないよ。まぁ探偵と言っても難事件を解決するとかそういったことはしてないし、探し物をするくらいだよ。」目を輝かせる女子高生を落ち着かせるように話す白生。

 

「おい金雀枝えにしだ、その人困ってんぞ」教室から白生と女子高生金雀枝のやりとりを見ていた学生が仲裁する。

「すいません、私調子に乗っちゃって……」シュンとした顔をして謝罪する姿に少し気を悪くする白生「全然大丈夫、こちらこそ貴重な昼休みの時間を奪ってしまってごめんね」

「こっちも全然大丈夫ですよ!もう昼食食べ終わってるので!」一気にパァアと明るくなり元気に返答する金雀枝。

 

 教室の中から微かに「あの量もう食い終わってんのかよあいつ……」「おいおいマジかよ……バケモンか……」

 

「僕はこの辺でお暇させてもらおうかな、皆んなの授業の邪魔になってしまうし、放課後辺りにもう一度詳しく調べるかな」

 それを聞いた彼女は「あの、私もそれ、調査?手伝ってもいいですか?」

 

「え?いやぁそんな大層なもんじゃないし、ただこの学校の施設とかを見回るだけだし、退屈だと思うよ?」と投げかけるが、即座に「二人でやればもっと正確にできるんじゃないですか!?」羨望の眼差しで問いかける女子高生の圧の強さにたじろぎつつ「まぁ危険があるわけではないだろうし今回は特別にいいよ、」「やったぁー!!」跳ね飛びながら喜びを表現する彼女に彼は告げる。「僕の名前は白生翔廻、一応探偵をしている者だ。よろしく」

 自己紹介と共に廊下から姿を消した。

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