読者の諸君は「白金の城のムネきゅん☆岸田京子~渋谷激闘編~」と言う作品をご存じだろうか
もぐの
読者の諸君は「白金の城のムネきゅん☆岸田京子~渋谷激闘編~」と言う作品をご存じだろうか 【第一報】
つい先日まで暑い暑いと言っていたと思うのだが、気がつけば寒さで手は悴みインターネットでは「アドベントカレンダー」なるものの通知がSNSを彩る季節になっていた。そう、12月である。
アドベントカレンダーと言えば、昨日読んだ「架空アニメ Advent Calendar 2025」4日目の記事がとても良かった。モクヨ氏によって几帳面に整理された物語の解説は非常に痛快で読み応えがあった。なお筆者は4話の演劇部女子推しである。
さて、読者の諸君は「白金の城のムネきゅん☆岸田京子~渋谷激闘編~」と言う作品をご存じだろうか。
1983年から1984年にかけて放送された全12話のアニメシリーズである。
三人の監督が持ち回りで各話を担当し、監督間での打ち合わせは一切不可。監督たちに与えられる情報は前話の一番最後のシーンのみ。と言うとてつもなく企画性の高い作品である。監督は前話の最後のシーンからストーリーを推測し、それとの整合性を取りつつ自担当の話を組み立てなければならない。
「そこに偶発的な面白さが生まれるとか、マンネリ化しつつあった当時のアニメーション作品のフォーマットを打ち破る力が宿るとか。三人ですごく盛り上がったんだよ。」
そう話したのは今回インタビューが叶った監督の一人、木下洋平(代表作:いやん♪いけないポンタくん(1981))である。
木下は養成学校の同期だった近藤明久監督(代表作:花園のアリスたち(1990年))、相沢尚子監督(代表作:やるせないぜBros(2006年))と板橋のおでん屋台でこの作品の構想を思いつき、その足で八王子にある当時の大帝アニメーション(現:DAINamo社)に企画を持ち込んだらしい。
当時の大アニは「元太のおにぎり2」の製作が一段落ついたものの、給料の不払いにより監督がストライキの真っ最中と言う状況であった。
会社は次回作の製作に遅れが生じることを恐れ、木下たちの持ち込んだ企画を全面
的に受け入れる形で本作の製作を決定したと言うことだ。
ちなみに筆者と木下が会話をするのはこのときが初めてである。先日、筆者が友人と酒を交わしながら本作の話をしていたところ、たまたま隣に木下が座っていたのだ。そこで木下と仲良くなり、後日この場所で本格的なインタビューに応じてもらう約束を取り付けることに成功したと言うわけだ。(その代わりに酒を奢れとのことだった)。
本作品の公式な製作秘話は雑誌「アニメーだー!(1983年10月号)」のみであったため、木下の具体的な話によって本作品の研究が一気に進む可能性がある。
今はうれしさのあまりインタビューを待たずに勢いに任せてこの記事を執筆している。インタビューの成果は筆者の次回の記事で明らかになるだろう。
ここからは本作品の結果を整理しておく。
本作品の内容は読者の予想通り荒唐無稽で破茶滅茶であり、平均視聴率は0.22%と言うDAINamo社史上最低視聴率を記録している。また、途中で監督の一人である相沢尚子監督は自担当の第九話を前に失踪し、急遽太田一郎監督(代表作:電熱雷人ガガリアン シリーズ(1978年~))が代役を務めるなど、製作現場も相当な混乱が生じていたようだ。相沢監督の失踪の理由は明らかになっていないが、他の監督と何かしらの確執があったのではないかと言うのがファンの中での定説である。ここは木下にぜひ真実を聞いてみたいところである。
あと、本作品のもう一人の監督である近藤明久氏は、本作品の放送から7年後の1991年8月に趣味の登山中の滑落事故で鬼籍に入られている。当時発表されていた「花園のアリスたち2」が実現しなかったことが今でも残念である。木下には若き日の近藤監督のこともいろいろと聞いてみたいと思う。「花アリ」ファンの読者諸君も楽しみにしてほしい。
本作品に話を戻すが、月曜夜7時と言う子供向け番組の黄金時間にも関わらずおもちゃメーカーが全くキャラクターグッズを発売しなかったことも異例中の異例と言える。そのため、現代に於いては資料がまったくと言っていいほど現存せず、当時を知るファンたちが相互補完をしながらおぼろげな記憶を語り継いでいると言う状況である。
ちなみに「白金の城のムネきゅん☆岸田京子~渋谷激闘編~」と言うタイトルは1988年の再放送時に名日新聞のテレビ欄に掲載されファンの中で定着したものである。実は本作にはタイトルが無い。1983年の本放送時は三人の監督がコードネーム的に使用していた「キャシー」と言うタイトルが便宜的に使われていた。その地味なタイトルが視聴率の低迷に拍車をかけたのではないかと筆者は考えている。
ここまで書いて木下との待ち合わせ時間になった。
読者の諸君に於いては、この後の報告を楽しみにしていてほしい。
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