魔法使いたちの//クロスロード〚√Δ〛――1.23%の魔法社会と消えた四人の連理比翼――

梛猫ブラン《勇者774》

Ver.C この世界、チルの物語【あなまほクロニカル】

第一章 出逢いは、マイナス二十六年目の年度末にて【2024・春@甲南湖】

【#01】 星明かりの名を持つ魔法使い、斯く語りき。――あぼんしかけた俺は、気がついたら、“ようじょ”にドボンしていた。

 星に願いをあぽんあすたー――

 昔から よく そう言うけどさ!


 もしもIF 星のほうがThe Stars

 まじめにdescribed 願いをA STRNG

 かけちゃってたらWishes

 どうなんと思う?


 こう・・ なんだよ!


 すりぃとぅわん

 もういいかい? はじまるぞ!

 





 ⋯⋯――ぅうう。頭、超痛ってぇ⋯⋯!


 けど、ぎりぎりどうにかなったみたい。


 軋みを上げるこめかみに、内側から叩き起こされた俺は、

 痛む部分が他にはないことに、安堵しいしい身を起こしかけ、


 って、え――!?

 

 手のひらに感じた強烈な違和感に、目を見開いた。

 途端、ぶり返してきた刺すような痛みに思わず顔をしかめる。


 いや、顰めたのは頭痛のせいだけじゃない。



 おいおい、なんつうか、まるであいつの髪に触れた時みたいじゃなかったか、今!?



 ギョッとしたあまり、引っがす勢いで離してしまった右手と、起き上がりかけの体を支えている左手。


 腰回りに軽く力を込めて、上半身をしっかりと支え直した俺は、自由になった両手でもって今度はこわごわと頭髪に指を這わせ、絡ませてみる。



 おかしい。



 俺の髪がこんなに柔らけーワケない。


 大体、ここ、どこなんだよ?


 見たトコ、和室みてーだけど。


 

 会場にこんな部屋、あったっけかな⋯⋯?



 それに⋯⋯あれ? そもそも俺、どうやってここに?

 変だな。思い出せねえや。


 いよいよ奇っ怪。


 痛くない方の頭の隅で、端的に浮かべると、何かヒントが見つかりやしないかと、俺はぐるりと部屋の中を見回すことにした。


 まず右手側。

 床の間があり、鞘におさまったままの太刀と脇差が飾ってある。


 奥側と手前には、手作り感あふれる掛け軸に、金彩の施された壺が赤白で一口ずつ。


 その反対へと首を巡らせると、モノクロの写真が額縁に入れられ、長押なげしに三人分飾られている。


 写っているのは男二人に、女性が一名。

 日本海軍の軍服に、袴姿に、留袖姿。服装からして戦前か戦中おおむかしに撮影されたものだろうか?


 二間続きの襖は開け放たれていて、その向こうに置かれた座卓の天板には、和室には似つかわしくないペット用のキャリーが二つ並んでいる。


 サイズはどうみても、小型犬用。猫か犬でもいるっぽいな。


 部屋の明かりは消えているが、まだ日が高い時間らしく、自然光だけで部屋の中は十分明るい。



 だから照明はいていなくて――、って、


 うん?

 ⋯⋯なんか天井高くないか? 

 俺が、座ってるせい?



 それにしても、どこか違和感ある気がするけど。

 ま。いいや。立てばわかる。 


 俺は、立ち上がりながら再びあたりを見渡した。


 ふうむ、レセプション会場のホテルの和室にしちゃあ、生活感ありすぎ。一般家庭の二間続きの日本間ってところだな、こりゃ。


 天井は――⋯⋯。


 うん。やっぱ不自然に高い。


 俺は思った。


 三メートルじゃ利かなくね?


 見たトコ、天井高以外は普通の日本間なのに、なんでこんな作りにしたんだろう。


 これじゃあ照明入れるのだって不便じゃねーか。


 実際、百七十五の背丈の俺でも、紐に手が届きそうにないしさ。


 他に妙なところは――?


 さらに確かめようと、窓ガラスの向こう、庭先へと目を向けた俺は、映り込んでいる姿に、思いがけず、


「ぅワきゃあッ!?」


 叫んでいた。



 そう。


 俺の喉から出せるワケのない、それこそ小学生になるかならないかくらいの――


 幼い女の子・・・・・そのもの・・・・、な声で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る