第16話 高みの見物

 ホラー映画の冒頭で、女が悪漢に襲われて逃げ惑う。


 それを高みの見物とばかりに、ポップコーンを摘みながら観ていた。


「助けてー!」


 甲高い悲鳴をあげながら、赤いハイヒールがズームアップされる。


「ダズゲデェェ」


 女の声が徐々にくぐもり、やがて恐れから怒りへと変わった。


「ア”ヤ”グダズゲデェェ」


 耳元に吹きかける冷たい息に身震いし、そっと振り返ると……アギャア”ア”ア……ぶつんと意識が途切れ、気づいたときにはエンドロールが流れていた。


 なぜか主演には自分の名前が載っている。


「アレ? ここは?」


 いつの間にかソファがなくなって、映画の冒頭にあった暗い路地に立っていた。

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