第2話 後ろ髪
会社をクビになり、妻子に逃げられてからも、感傷をなぞるようにパン屋でバゲットを買った。
帰り道、消防局の前を通ると、訓練塔の上で女が手を振っていた。
白のブラウスに足首まで伸びたスカートが風に
もう帰りたくないと思った。
憑き物を避けるように目を逸らしていたが、この道を通るたび、視界に映る女に後ろ髪を引かれていた。
バゲットを車内に残したまま、私は一歩ずつ階段を登った。
そのたび、妻子との思い出が
頂上に着いた私に、優しい目をした女が手を伸ばしてきた。
妻の声がして振り向くと、女も消えていた。
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