第8話 電車にて
「やあ。」
「げ。」
「げ、とはなんだ。傷つくじゃないか。」
突然だが僕は電車通学である。
三駅先の駅で降りて、それから徒歩で学校に向かう。
当然、同じ学校の人と出会うことはしょっちゅうだ。
だが、
「よりによってこの人とかよ。」
「私そこまで嫌われることしたかな?」
この人の名前は
天文部唯一の先輩で、部長。
「まあ、ここは先輩の寛容な心で受け入れてあげよう。かわいい後輩のためだ。ははは。」
明るくフレンドリーな性格である。
「で、今日は英単語やらないのかい?」
「あー。そうっすねえ。昨日かなり色々あったんで、勉強する習慣が途切れたというか、やる気がいまいち出ないというか。」
「ほうほう。」
「僕、科学館とか展望台行くときとか行った後とか勉強できないタイプなんですよ。」
「分かる。私もだ。」
「それに近い現象が起きているんですよね。喪失感というか、達成感かな?どのみち、今はやりたくないんです。でも、学校に行ったら流石にスイッチ入りますよ。心配しなくても……なんで俺が毎日電車で英単語やってること知ってるんですか!話した覚えないんですけど!」
「うん。話されてないよ。」
「ならどうして!」
「そりゃ、前に何回か見てたし。」
「……。」
見られてたのか。
「いやいや。恥じることはないだろう。電車の通勤時間という隙間時間を使って勉強をすることは、むしろ褒められるべきことだ。」
「そりゃ、どうも。」
「だから今日、やってないのが珍しく思えてね。今日声を掛けたわけだけど。なんだい?何があったんだい?」
「言っても信じられないと思いますよ。」
いや、先輩なら、天文部のみんななら、すんなりと信じる可能性もなくはないか。
しかしどちらにせよ、電車の中でする話ではない。
「明日の部会の時にでも話しますよ。」
「分かった!彼女だな!」
「なんでそうなるんですか!」
「女の匂いがする。」
「おんっ…!違いま…。」
あれ。
一応、ベルは女子か?
いやでも彼女ではないし、そもそも宇宙人に地球の性別というものを当てはめていいものなのか?
「ははーん。黙ってるってことは図星だね。」
「だから違いますって。」
「いいや私には分かる。昨日初めて家に連れこめたんだろう?そして夜にせっ
「ちょっとまったああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ここ!!!
電車!!!
公共の場所!!!
「急に何を言い出すんですかアンタは!」
「こっちのセリフだよアタル君。急に大声を出さないでくれたまえ。ここは公共の場だよ。」
誰のせいだと……っ!
はあ。
やっぱりこの人といると疲れるな。
朝から体力が無くなってきた。
今日もつかな。
「……やっぱ、図星なんだ。」
「違うって!」
無理っぽいなこれ。
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