肩の力を抜いて楽しめる語り口なのに、読み進めるほどに設定の面白さと人間味がじわっと伝わってくるお話でした。
「降水確率0%」という言い切りの強さや、主人公の職業観がまず軽快で、物語の世界にすっと入りやすいです。
全体を通して、天候という大きな力を扱いながらも、どこか身近で可笑しみのある感情に落とし込まれているのが印象に残りました。晴れや雨が単なる現象ではなく、人の想いや立場と自然につながっている感覚があります。
語り手の自信や誇らしさ、そしてそこから生まれる視点の揺れが、後半に向かうほどやさしい余韻に変わっていく流れも心地よかったです。
読み終えたあと、空模様を見る目がほんの少し変わるような、明るさと温度を持った一編でした。