第10話 発電施設を取り返せ!
僕は部屋の鍵を開け、卓也さんを招き入れる。
「卓也さん、話って?」
「ああ、街の北側の怪物のテリトリー内に発電施設があってな、怪物のいない秘密の地下道を通って施設に入り込み、そこから街に電力を供給してるんだ、だが……」
「どし、たの……?」
アスカはワイシャツを整えながら心配そうにする。
「強力な破壊種がそこを陣取り、電気石の投入が不可能になってしまったんだ。このままじゃ、マズい……」
発電施設か、生きていくには大事な施設だ。
僕からも聞いてみる。
「電気石って?」
「発電施設の周辺に生息している怪物は体内に電気を溜め込んだ石を持っていてな、それを発電施設の電力にしてんだ」
「怪物から電力が得られるなんて、すごいな」
僕は素直に感心してしまう。
「発電施設内だけはテリトリーでは無いらしく、怪物は入ってこなかった。だが、大型破壊種の電気蛇エレキラゴンが発電施設を陣取り、施設に来た人間を食ってしまうんだ。大勢でかかれば倒せるかもしれんが、間違いなくたくさん死人が出る」
「卓也さん……」
……僕は、善人じゃない……だが。
「僕が倒すよ」
「引き受けて、くれるのか?」
「代わりに情報が欲しいかな、とにかく、なんでも良い。集めて提供して欲しい」
あまりにも情報が無さすぎる。
このままじゃ、何があるか分からないからな。
「お安い御用だ」
「ワタシも一緒に戦うよ……」
「ありがとう」
そして、僕とアスカは卓也さんから発電施設の場所を教えてもらう。
「本当に2人だけで良いのか?」
「正直な話、アスカまでしか守れる自信が無い。他の人の命は重くて背負えないよ」
「エヘヘ♪」
アスカは長い金髪をいじりながらご機嫌に笑う。
「すまん、秘密の地下道は、おいそれとは教えてはならない決まりになっててな、心苦しいが」
「卓也さん、Mレックスをぶっ殺した僕とアスカに、そんな通路は必要ないさ」
「そう言ってくれると楽になる」
──僕は自信満々にアスカと一緒に外に出る。
そしてサバイバーが住んでいる領域を越え、地図を頼りに北へと向かった。
サバイバーとは、怪物の領域外にコミュニティを形成している人たちのことだ。
基本的に安全領域は怪物のテリトリーに取り囲まれる形で点在しており、ほとんどが断絶されているとのこと。
なので、他のコミュニティがどうなっているのかを確認する方法は難しいらしい。
「どこも怪物ばかりだね……」
「そうだな、まるで世界の終焉みたいだ」
襲い来る怪物をなぎ倒し、アスカと話しながら目的地へと向かう。
──夕暮れに照らされた寂れた建物郡。
アスファルトの割れ目からは未知の植物が顔を出し、微かに発光している。
建物や標識にツルが絡まり、青々とした様相は、人の世界が終わってしまったことを物語っていた。
──望む肉体と力を得て、愛らしいアスカと共にこの崩壊世界を駆け抜けている事実。
解放感……高揚感……全能感に心が満ち溢れる。
されど、漠然とした不安感も確かに存在する。
だが、この子と一緒なら何とかなるような、そんな確信めいた感覚を何故か持っていた。
「あ、アル君、あれかな?」
「間違いないみたいだ」
アスカは片手でワイシャツの裾をパタパタさせながら建物を指差す。
目のやり場に困るな……でも、見てしまうんだけど。
そして、僕は発電施設に目を向ける。
「……発電施設の敷地内に、何かいる」
そこには、黄色い体色をした巨大な蛇が彷徨いていた。
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