崩壊世界の無双転生~見捨てられし世界で出会った少女~

無限野アイン

第1話 クソッタレなカラダにさようなら

「おらおら! 金出せや!」


 トイレで4人のクラスメイトに取り囲まれ、蹴りを入れられる。


「ぼ、僕、お金なんて持っていない」


「はぁ? そんなのが通ると思ってんのか? お前世の中舐めてんだろ?」


 さらに激しく蹴りを入れられる。


「ぐああ! や、止めてくれ……!」


「汚ねぇツラしやがって、このハゲデブチビのメガメ野郎が」


「けっ」


 下劣な笑みを浮かべながら4人はツバを吐きかけトイレから出ていく。


「どうして……どうして僕がこんな目に……」


 腹を押さえながらヨロヨロと立ち上がり、教室へと戻る。


 ──痛みをこらえながら授業を受けていると、先生が質問してきた。


「田中、この問題を解いてみろ」


「す、すいません、分からないです……」


「はぁ? 分からないだぁ? お前、俺の授業聞く気無いんか?」


 顔をしかめながら先生は嫌味を言ってくる。


「そ、そんなことは……」


「はぁ……ったく、顔は醜い上に頭も悪いとか救いようがないな、お前」


「うう……」


 なんだ……なんでここまで言われなくちゃいけないんだ。


「ケケッ」


「あっはは」


 クラスメイトの笑い声が聞こえる。


「お前、生きてる価値ねぇよ。いるだけで周りを不快にするムダ飯食いの害虫が」


「言えてる、ギャハハ!」


 酷い……酷すぎる!


「お前など死ね! このクズ野郎! 死んでしまえ!」


「う、うう……うわあぁぁぁぁぁっ!」


 僕はたまらず教室を飛び出した。


 今まで言われた言葉が走馬灯のようにめぐってくる。


『こんな子、産むんじゃなかったわ』


『この出来損ないが!』


 どうして……。


『兄と違ってブサイクだな、テメェ。死ねよゴミが』


『悟浪菌が移る、みんな、石投げろ!』


『気持ち悪い、近づかないで!』


 なんで……っ!


 ふと体が浮遊する感覚が襲ってきた。


「あっ……!」


 階段から足を踏み外し、頭から落下する。


 ──全てが真っ暗になった……。


「…………」


 ──少しずつ意識が戻ってくる。


 痛みはない、打ち所が良かったのか?


 僕はゆっくりと立ち上がり、目を開く。


「……は?」


 学校の壁や階段はひび割れ、窓ガラスもほとんど割れていた。


 床には砂埃のようなものがうっすらと積もっている。


「何が、どうなって?」


 ふらつく足取りで階段を降り、手洗い場に向かう。


 視界が変だ……喉も乾いている。


 蛇口をひねり水を飲み、ふと目の前の鏡を見る。


「あ……え……?」


 鏡には顔立ちの整った茶髪の青年が写っていた。


 身長は170少しだろうか。


 赤いマントにファンタジー風の青い服を着ており、腰には剣まで差していた。


 信じられない光景に思わず2度見してしまう。


「ど、どうなってるんだ?」


 背の低い小太りな体、醜悪な顔に禿げ上がった頭……。


 かつての僕の醜い外見は完全に消え失せていた。


「ゆ、夢……?」


 僕は頬をつねってみる。


「い、痛い!?」


 夢じゃない……!


「夢じゃ、ない……!!」


 体が軽い……視界もクリアだ……!


 あのおぞましい醜い姿は、もうどこにもない!


「や……やったぞぉぉぉぉっ!!!」


 何が起こったのは全く分からないけど、あの悪夢みたいな姿とおさらば出来た事だけ分かればそれで良い!


 僕は生まれ変わった体で、学校の玄関から軽快に走り出していった。

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