第六話 その前に、バトルコスチュームは大事!
グラウンドのベンチにすわったまま、男の子のイア
「なら、いくぜ」
すると……。
わたし・
そのぬいぐるみは、
――ミニ・シンギュラリティ。
略してミニシン!
「つっても、こいつらを作るには材料が足んねーんだわ。だから訓練として、まぼろしをおまえに見せる」
「ありがと、イア太! だけど
「ミニシンは、カメだけじゃねーんだよ」
「
「研究所で暮らしていたミニシンたちのにげた日が、つい最近。だから情報が少ない」
ここで、ベンチにすわっていた男の子の姿がふっと消えた。
「ミニシンの操作に集中したいからな」
わたしの右手のマイクが、本来のイア太として声を出す。
「あとは戦いやすいよう、アマノの服も変えてみようか」
「服? 着がえても、たいして意味ないんじゃないの?」
「ダメージを吸収する性質の服を生成すれば、ケガのリスクが下がる」
イア太が、すらすらと説明する。
「
「速く動けるってこと? なら、カメさんのこうらのスピードにもリベンジできそう!」
「素材には、アマノの着ている服を使う。ちょっと生成しなおせば、バトルコスチュームに早変わりだぜ」
「いいね! ……ところでイア太」
ついでわたしは、改めて辺りを見回した。
砂あらしで囲まれた、グラウンドみたいな場所。
イア太によると、その場所を砂つぶ一つの
「実際にわたしたちがミニシンを見つけたら、今みたいな場所を生成して、その
「そうなる。人の目があったら、おまえも戦いにくいだろ」
「じゃあ思う存分、動けるね。でもどうせなら生成する服は、おしゃれなのがいいな」
「だれかに見せるわけでもねーし、見た目にこだわっても、それこそ無意味じゃね?」
「いやいや、わたしのテンションが上がる。イア太も想像力を働かせることになるから、きっと楽しい!」
「ま、
「だよね! じゃ、プロンプト入力」
わたしは頭でいろんな言葉を思いうかべ、次から次へとイア太に伝える。
「えっと、わたしの着ている服を素材にして、動きやすく、ケガしにくい感じで。だれも見たことのない派手なジャケットに、風にふわりとなびくスカートを組み合わせて」
「長いな。そうだ、アマノ。『プロンプトの圧縮』をやったらどうだ?」
「圧縮?」
「戦うたびにいちいちさっきのプロンプトをおれに伝えてたら、めんどいだろ?」
「確かに。短くできればいいんだけど」
「そう、プロンプトの圧縮ってのは、プロンプト自体の意味を変えずにプロンプト全体を簡単な
「好きな言葉でいいの? ならプロンプト圧縮、『リジェネレーティブ』で」
「よし、それを圧縮プロンプトに登録するぜ。でも、なんでその言葉なんだ?」
「
「悪くは、ねーな。唱えろよ」
おもしろがっているイア太の口調にうなずいたあと、わたしはマイクを構え、さけんだ。
「リジェネレーティブ!」
その「圧縮プロンプト」に反応し、わたしの着ていた服がちぎれる。
わずか数秒で別の
気づくと、新しい服装がわたしの全身をおおっていた。
くつも、服に合うデザインに変わっている。
思わずわたしは、グラウンドを走り回っていた。
派手なジャケットと、ふわりとしたスカートをなびかせながら――。
「軽い! かわいい! かっこいい! あせをかいても、気持ちいい!」
「お気にめしたようだな」
「さすが! でも、
ふと前方の地面を見ると、クジラのぬいぐるみがその目をうるうるさせていた。
「ごめん、今、相手になるから泣かないで」
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