第五話 イア太といっしょに。
土曜日の午前、公園のベンチにて――。
わたし・
――イア
――イア太を捨てて、戦いをさけるか。
マイクをにぎる手に
「ミニシンについても分かったし、いっしょに戦うよ。イア太は、捨てない」
その返答を聞いたイア太がわたしに、いぶかしげな視線を向ける。
「おれが
「すごいとは思うよ。でも、捨てない理由はそれじゃない」
ついでわたしは、公園で遊ぶ子どもたちのほうをちらりと見た。
「わたしが
「立派なことで」
イア太が、
「自分をぎせいにして、
「え、ちがうよ。『しっと』だよ」
皮肉っぽく笑うイア太の顔を見て、わたしは少しむっとしていた。
「友達になれたのにイア太が
「はあ? そんな、しょーもねえ理由かよ。はは、そっか……」
イア太がおなかをかかえている。笑い声が
男の子の姿だけでなく、わたしのにぎるマイクも身をふるわせたようだった。
「もう、イア太ってば笑いすぎ。わたしは
「はは、悪かったな。ところでアマノ、気づいてる?」
「
「今のおまえ……、
「別に、いいよ」
公園で遊ぶ子たちがわたしのほうを指差して、ひそひそ話しているのが見える。
――でも。
「わたしがイア太と会話してるって、わたし自身が知っているから」
「言っちゃあなんだが、おれに心はないよ。まるで人と同じ心があるかのように、それらしい会話文を生成しているだけさ。そんなのと
「ねえ、イア太。わたしのおばあちゃん、庭いじりが好きなの」
「
「おばあちゃんは、庭で
わたしはマイクを――イア太をそっと、なでた。
「おばあちゃんの声に応える植物たちは、君に似ているよ。だってイア太もプロンプトという願いを受けて、その思いに応えようとしているんだから」
「いっちょまえに言うじゃん。
「人じゃないからといって、わたしが君に話しかけるのを否定したら、植物に声をかけるおばあちゃんのことも否定してしまう気がする」
そしてマイクの丸い頭部を
「だからわたしは、生成AIと――イア太と
「……いいや、変だね。あの子たちも、こわがっているじゃないか」
イア太の言う通り、わたしを指差していた子どもたちが、びっくりして手をひっこめた。
ただ、イア太は顔をそむけ、ぽつりと付け加えた。
「でも、おれはアマノの変なところが好きだ。おまえが変だからこそ、プロンプトとしてのおまえの言葉をたくさん受け取れる。おれも、たくさん言葉を生成できる」
泣きかけているみたいに、イア太の声がうわずっていた。
「それが、うれしいんだ」
* *
「……ともあれ実戦の前には練習が必要だな。場所を移すか」
「どこに
「この公園の、地面の砂つぶ一つの
イア太の声が終わると同時に――。
公園にいた小さな子どもたちがとつぜんいなくなった。いや、ブランコやすべり台も消えている。そして、いつの
ただ、地面の砂の感じもその広さも、学校にあるようなグラウンドに近い……!
「おれが、砂つぶ一個の内側に『場所』を生成した。光も作った。おれたちは今そこにいるけど、公園には簡単に帰れるから心配すんなよ」
「本当に
わたしは、グラウンドにぽつんとあるベンチにこしかけていた。すぐに立ち上がる。
「じゃ、ミニシン相手のリハーサル、お願いね!」
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