第2話 朝活の呪い。
「おはよう」と書かれたストーリーズの文字が、やけに攻撃的に見えた。
午前7時。友達がランニングで見たという、神々しい朝焼けの写真。
その投稿には「#自分を追い込む」「#生産性」というハッシュタグが並ぶ。
私は、昨晩の課題のせいで布団から出られず、その眩しい光をスマホの画面越しに見つめている。
「生産性の低い私」に、朝の太陽が容赦なく浴びせられているような気がした。
私たちの世代は、常に「自己責任」と「タイパ」を突きつけられている。
大学生活の全てをスキルアップと将来の準備に捧げることが「正解」で、一瞬でも時間を無駄にすれば、未来の自分に負債を押しつける「悪」なのだと。
朝活とは、もはや自己啓発ではない。それは、社会の競争から脱落しないための、義務になってしまった。
早起きして簿記の勉強をする友人は「意識高い」と褒められ、ギリギリまで寝ていた私は「だらしがない」と自責する。
自己肯定感まで、コスパで測られていないだろうか?
ある朝、私は反抗するように、あえてスマホのアラームを止めた。
そして、何の予定もない、「無為な時間」を過ごすことにした。
近くのコンビニでコーヒーを買い、誰もいない大学のベンチに座る。
勉強も、情報収集も、誰かの成功の通知も、そこにはない。ただ、コーヒーの湯気がゆらゆらと立ち上っているだけ。
誰にも評価されない、何の役にも立たない時間。
しかし、その「非効率」の極みの中で、私は初めて心が緩むのを感じた。
その無意味な沈黙が、競争的な社会で凝り固まった自分の心を、ゆっくりと解きほぐしていく。
もし、私たちを追い詰める他人や、理想の自己像が不在の場所があるとしたら、それはこの「非コスパ的」な時間の中にしかない。
私は、誰かの承認のために生きているわけではない。
この無駄な時間こそが、効率至上主義という名の義務から、唯一私を解放してくれる「思考の余白」なのだ。
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