コミック書評:『しんぐ』(1000夜連続7夜目)

sue1000

『しんぐ』

『しんぐ』は、寝具コーディネーター・東川泯(29歳)と、ベッドに入るとテンションが上がってしまい逆に目が冴えてしまうアイドル・保科アサヒ(23歳)が織りなす、史上初の「寝具」マンガだ。


泯が自信作のベッドを手配したテレビ番組で、共演したアサヒはまさかの「まったく寝落ちない」パフォーマンスを披露。誇り高い天才寝具コーディネーターとしてプライドを傷つけられた泯は、自らアサヒにリベンジを挑むが、やはり効果はゼロ。そこでようやく彼女の特異体質──ベッドに入るとテンションが上がってしまうという衝撃の事実が明らかになる(特異体質といったけど、私も子供ころはそうでした)。その後、泯はアサヒのマネージャーと親しくなり、コンサートツアーのスタッフとして同行するチャンスを手にする。こうして「ベッドで眠らせたい男」と「ベッドで眠れない女」の壮大な戦いが、日本中を舞台に縦横無尽に繰り広げられるのである。


作中では、高反発マットレスや温度調整機能付き掛け布団など、一流ホテルも顔負けの最強の寝具が毎話登場するが。どれだけ強力な寝具を並べても、アサヒはベッドに飛び込むとテンションMAXになってしまい、そのまま夜の街へと飲みに出かけてしまう。

そして、読み進めるほどに、思わずベッドに潜り込みたくなる衝動に駆られ→気づけばベッドで読んでいる→そして寝落ちするという恐ろしい中毒性は、他の作品では味わえない。


ちなみに、私は3話に登場するオーガニックコットン100%の薄手タオルケットが欲しくて堪らなくなった。というか、そもそもタオルケット派で、肌に触れた瞬間のさらさら感と、ほんのり包み込まれる絶妙な保温力は他に変えようがないと思っている。軽やかな羽衣のように体を包むから、ちょっとした沈み込みですっと安堵し、思わず「やっぱりタオルケットって最高!」と叫びたくなってしまう。四季を問わず枕元にスタンバイさせると、枕の高さ調整にも使えるし、とにかくタオルケットは万能だ。


と、話が脱線したが、これほどそれぞれが自分のこだわりを論じることができる――人生の1/3の時間をともにする寝具の魅力をテーマにしたマンガがいままで存在しなかったのが不思議なくらいだ。


市場規模7000億円を誇る巨大な寝具産業。まだまだ我々の知らない魅惑的な寝具が世界にはたくさん埋もれているのだろう。

だからこそこの『しんぐ』の価値は計り知れない。人間の三大欲求の一つであるである眠りも、そもそも寝具があってこそ生まれる。だから我々にとって等身大のドラマがここにある。結論としては、寝具万歳ということだ。






というマンガが存在するテイで書評を書いてみた。

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