第20話 いざ王都へ! 護送されると思ったら「凱旋パレード」が始まっていた
ガストン伯爵を「労基(女神)ビーム」で撃退してから、数日が経った。
私は教会の窓辺で、荷造りをしていた。
と言っても、私の荷物は少ない。転生した時に着ていたスーツ(今は箪笥の肥やし)と、女神からもらったスマホっぽい端末くらいだ。
「……はぁ」
深いため息が出る。
今朝、王都から再び使者がやってきたのだ。
今度はガストンのような無礼な私兵ではなく、王家の紋章が入った正式な「近衛騎士団」だった。
彼らが持ってきたのは、国王陛下からの直筆の書状。
『聖女シズ、および第三騎士団。王都にてガストン伯爵の一件について事情を聴取する。速やかに出頭せよ』
文面は丁寧だったが、要するに「呼び出し」だ。
貴族を黒焦げにしたのだ。当然、タダで済むはずがない。
きっと王都に着いたら、怖い尋問官に囲まれて、地下牢行きか、あるいは莫大な賠償金を請求されるに違いない。
(さよなら、私のスローライフ。短い夢だったな……)
私は覚悟を決めて、部屋を出た。
* * *
教会の前に行くと、そこには異様な光景が広がっていた。
「総員、装備の点検は完璧か!」
「「「イエッサー! 塵一つありません!」」」
「シズ様の美しさを王都の愚民どもに知らしめる時だ! 気合を入れろ!」
「「「オオオオオッ!!」」」
……なんか、空気が違う。
私が想像していたのは「重苦しい出頭風景」だったのだが、目の前にいる
全員、鎧をピカピカに磨き上げ、マントをたなびかせている。
その先頭に立つレオナ団長に至っては、肌ツヤが良すぎて発光しているようにさえ見える。
「あ、シズ様!」
私に気づいたレオナ団長が駆け寄ってきた。
銀髪がサラリと揺れる。
「お待たせいたしました! 『聖女シズ様・
「凱旋……?」
私は首を傾げた。
「出頭命令ですよね? 私、怒られに行くんですよね?」
「まさか!」
レオナ団長は鼻で笑い飛ばした。
「国王陛下は賢明な方です。ガストンごときの
「ポジティブすぎる」
彼女の中では、すでにサクセスストーリーが出来上がっているらしい。
「それに、もし王家がシズ様に牙を剥くようなら……」
レオナ団長は声を潜め、妖艶に微笑んだ。
「その時は、我々が王都を制圧します。シズ様のための『聖女帝国』を建国しましょう」
「やめて! クーデターはやめて!」
この人たち、私のバフのせいで強くなりすぎて、本気で国の一つや二つ落とせそうなのが怖い。
「シズ様〜♡ お荷物、積み込みましたわよん」
馬車から顔を出したのは、サキュバスのリリスだ。
彼女はもう完全に「専属メイド」の地位を確立していた。
フリルたっぷりのメイド服(ミニスカ仕様)。背中の翼も隠さず、むしろチャームポイントとして堂々と晒している。
「王都の殿方を何人たぶらかせるか、楽しみですわねぇ♡」
「喧嘩売らないでね? 絶対だよ?」
「シズ様! 私も行きますからね!」
元気な声と共に、ノエルちゃんが飛び出してきた。
彼女も旅装束に着替えている。
そして、その横には村の少年・トトの姿もあった。
「オレも行くぜ! 爆発ねーちゃんの伝説、最後まで見届けてやるよ!」
「爆発ねーちゃん言うな」
どうやら、私の「護送」の旅は、賑やかな慰安旅行になりそうだ。
* * *
出発の
用意された馬車は、囚人護送車ではなく、白塗りの豪華なリムジン(馬車版)だった。
近衛兵たちが気を使って用意してくれたらしいが、その周りを第三騎士団がガッチリとガードしているため、完全に要人警護の車列だ。
「聖女様ー! ありがとうー!」
「野菜が育ったのは聖女様のおかげじゃー!」
「また来てくだせえー!」
村人たちが総出で見送りに来ていた。
みんな泣いている。
たった数週間の滞在だったけど、ジャングル化した畑や、神聖温泉、そしてガストン撃退など、話題には事欠かなかったからな。
「……行ってきます」
私は小さく手を振った。
馬車が動き出す。
ガタゴトと揺れる車内で、私は遠ざかる教会を見つめた。
(静かに暮らしたかったなぁ……)
本音だ。
あそこで畑を耕し、昼寝をして一生を終えたかった。
でも。
隣を見れば、レオナ団長が(なぜか馬車の中に同乗して)私の手を握りしめている。
向かいにはリリスがお茶を淹れ、ノエルちゃんが外の景色にはしゃいでいる。
「シズ様、手が冷たいですね。温めましょう」
「あ、団長ずるいですわ! 私、足のマッサージします!」
「じゃあ私、肩もみまーす!」
狭い馬車の中で、美少女たちによるスキンシップ地獄(天国?)が始まる。
静寂とは程遠い。
騒がしくて、暑苦しくて、ちょっといい匂いがする空間。
「……まあ、いっか」
私は諦めの混じった笑みを浮かべた。
一人ぼっちの静寂より、この騒がしい「家族」との旅の方が、今の私には悪くないと思えたからだ。
「さあ、行きましょうシズ様! 王都が、そして世界が、貴女を待っています!」
レオナ団長の力強い宣言と共に、私たちの馬車は街道をひた走る。
目指すは王都。
そこで待ち受けるのは、陰湿な貴族か、新たなライバルか、それとも――もっと重い「愛」を持った強敵たちか。
元社畜・最強聖女の、次なる戦い(トラブル)が幕を開ける。
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