第2話 私だって、幼馴染以外の人とも話すことだってあるもん。

 学校に、着くと、先に行ってたひなたがたくさんの人に囲まれて、その中心で元気に話してた。


 はぁ。さっきのひなたとは大違いで、すっごく遠くに行っちゃったって感じの気持ちになる。私だって、友達を作ってみたいな。ひなたまでとは言わないまでも、一人くらいは一緒に話す友達が欲しいな。


 ……でも、もう、高校生になって2ヶ月も経っちゃったし、もう大体グループとかできてるんだよね。自分から話しかけるの苦手だし。


 かと言って、ひなたのグループに入ったら、きっとひなたが無理矢理入れてくれるとは思うけど、窮屈で、何にも話せなくなると思う。


 その繰り返しで、なんにも進まない。


 はぁ。また、本読もっと。


「あ、あの! 綾瀬さん!」


「え、あ、私、ですか?」


「そうです!」


 どうしよう。ひなた以外と話すことって、提出物出す時ぐらいだし、こんな一対一で話すことなんてほとんどないから、どうすればいいかわからないや。


「あの、急にごめんなさい。綾瀬さんとできたら友達になりたくって! 私、ミサトっていいます! 名前で読んでもらいたいので、苗字は言いません!」


「え、私と友達になりたい、の?」


「は、はい!」


 それに、名前で呼んでもらいたいって言ってたよね。


「えっと、ミサトちゃん?」


 ちゃん呼びで、呼んでもいいのかな。ど、どうしたらいいの。でも、流石に距離詰めすぎかな。ミサトさんの方が良かったのかな……。


「きゃあ! うれしい! 私もゆきちゃんって呼んでもいい?」


「う、うん。いいよ」


「やった!」


 こんなので喜んでもらっていいのかな。私も、とっても嬉しんだけど、いいのかな。


「わ、私も……」


「二人とも、なんの話してるの? わたしも混ぜて」


 私もうれしいって言おうとしたら、急に覚えのある声がやってきた。え、ひなた? さっきまで、人に囲まれてたのに、なんでこっちにきてるの?


「えっと、白石さんだよね」


「うん。白石ひなた。よろしくね〜。で、二人はなんの話をしてたの」


「えと、私がゆきちゃんに話しかけて、自己紹介みたいなこと、してたの」


「そうなのかぁ〜。いいね。……楽しそうだね。ゆき」


 ひなたが小声で、言った。なんか、ひなた、怒ってる?


「ごめん。ちょっとゆき借りてってもいい?」


「えっと、い、いいよ」


「うん。ありがと。じゃあ」


 ひなた、なんか用事あったのかな。もしかして、お弁当かな。ひなたに手招きされて、学校をどんどん進んでいくと人が少なくなっていって、最終的に誰もいない教室にたどり着いた。


 こんなところあったんだ。この学校広いからね。


「こんなところに来て、どうしたの、ひなた」


 そう言ったら、ひなたが抱きついてきた。


「ゆき。今日どうしたの。あの人、だあれ」


 ひなたがちょっとくらい声で甘えながら言った。そういうことか。私が誰かと話してたのを見て驚いたんだね。やっぱ、私、友達と話すだけで驚かれるんだ。


 これからは、もっと誰かとお話ししたり、友達作ったりしたいな。


「ねぇゆき。さっきの人、ゆきのことゆきちゃんって言ってたよね。なんで。ゆきがいいよって言ったの?」


「うん。ミサトちゃんっていうんだけど、私に話したいって言ってくれたの」


 はぁあ〜。嬉しかったな。


「ゆき。ゆきは、ひなたがいればいいんだよ。その、みさとちゃんって人と話すんじゃなくって、学校でもひなたと話せばいいの。わかった?」


「わかったって、私だって友達欲しい。だから、ひなたとは話さないよ」


「ひなたがいるじゃん。なんでダメなの」


 そりゃダメでしょって言おうとしたけど、ひなたがあまりにも悲しそうな顔をするからいえなくって、なんて言ったらいいかわからなくなった。


 ひなたと学校で話すってことは、あの、ひなたの周りにいる人たちはどう思うんだろ。急に私がきて、ひなたとの仲を邪魔する気がするし、私も、その中に入りたくないななんて思ってるし。


「私は、ひなたたちとは合わないと思う。だから、だめ」


「どういうこと。ひなたがだめなの? それとも、ひなたの周りの人たちがダメなの? そしたら、もう近づかないでっていうから」


「そういうことじゃなくって」


「なんで、ダメなの。他の人だったらいいのに、ひなたじゃダメなの? どうして」


 ひなたは泣きそうな顔をしながら言った。その時。


 キーンコーンカーンコーン。と、音がした。これは……授業が始まる合図。どうしよう。すぐに戻らないと。


「ひなた。急いで戻らないと。先生に怒られるよ」


「さぼろーね。ちょっとぐらい、いいよ。それに、ゆき、帰り方わからない、でしょ」


 ひなたって、それがわかってたから、ここまで連れてきたのかな。確かに、私はひなたに招かれるがまま来ただけだから、ここがどこかわからないし、どうやって帰るかわからない。


 どうしよ。ひなたは、クラスに戻る気はないみたい。でも、クラスに戻るにはひなたに聞かないと戻れないと思う。


 今の、ひなたは結構不機嫌だし、お願いしても聞いてくれないと思うけど。


「ひなた。私、クラスに戻りたい。おねがい」


「なんで、クラスに戻りたいの?」


 ひなたの声は一段と低くなって、ここで間違えたら、絶対クラスに戻らせてもらえなさそう。ひなたの顔色を伺いながら、答えないと。


「でも、ひなた。私、ひなたと一緒に授業受けたいな」


「ほんと? でも、それ、前も言ってなかった?」


 確かに、前にも使った手なんだよね。前にもこんなことがあって、その時もひなたにおんなじようなこと言った気がする。


 でも、ひなたと一緒に授業受けたいのは本当だし、ひなたがいるからこの高校にしたわけだし。


「わかった。じゃあ、ゆきがなんでも一つなんでもいうこと聞いてくれたら、ひなたも一緒にクラスに戻ってあげる。それでいーい?」


 なんでも一ついうことを聞くかぁ。何かはわからないけど、ひなただったら無理なお願いはしないよね。それより、今はできるだけ早くクラスに戻りたいし、ひなたの機嫌もちょっとなおってきたし、いっちゃお。


「うん。一つだけだよ」


「やったぁ〜! ゆき、だいすきぃ」


 ふぅ。良かった。ひなたの機嫌が超上機嫌になって、良かった。


「じゃあ、ゆき。手つないでいこ〜」


「うん。わかった」


 私はひなたの誘導にしたがって歩いて行った。

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