夢はやけにリアルだった。

 私は眠い目を擦りながらいつも通りに職場に行ったし、家に帰っていつものようにかぼすと夕食をとり、風呂に入り眠った。

 かぼすが言葉を喋るということがただ一つ、日常と違っていた。

 それが私に、これはいつか終わる夢なのだと認識させた。

 家に帰るとかぼすは「おかえり」と笑った。

 夕食を食べるとかぼすは「美味しい」と言った。

 風呂に入るとかぼすは私とお話をしてくれた。

 眠る時には「おやすみ」と私に呟いた。

 私も「おやすみ」と言った。

 一人の人間と会話するような心地で、私はかぼすと話した。

 なぜ言葉を話すのか、話せるのかについては訊かなかった。

 訊いた瞬間に、この夢が終わってしまうような気がした。

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