血を紡ぐ、汝は僕。

貌吐類

前編

第1話

僕等は、知らぬ内に何もかもを奪われてしまった。今日の昼飯でさえ不安定な生活だったのに、両親は狩りに行ったきり帰らぬ人と成った。

魔族に襲われたのだ。この辺は魔族の住処とは遠く離れており、まだ避難勧告も出ていなかったのに。

せめて顔を見てお別れしたかったなぁ。残るのは、微かな、それでも確かな血腥い香り、心が和む様な柔軟剤の心地、そして大量の血痕であった。


解析の結果、僕の両親の血で間違い無いとの事だった。何処かに逃げ延びれて居るのか、もう殺されて終って居るのか、若しくは奴隷堕ちして終ったのかもしれない。

魔族は、僕等の血肉を売り捌き利益を得て生きているそうだ。僕等も獣を狩り、時として街に売り捌いて生きているのだ、似たような物だろう。其れでも、涙は拭い切れ無かった。


集落長は、今回の事件で家族を失った子供を招集した。僕も其処に呼ばれた。村長は僕等に信じられ無い提案をしたのだ。要約すると、知り合いの伝手で寮制養兵学校に入学出来る事に成ったので、入らない?との事で、僕達は目を輝かせ、或いは憎しみを抱いた眼差しで、或いは魔族を滅ぼすという信念を孕んで、そして、狩りを行う獣の様な眼。


「俺は行くぞ!奴等を皆殺しにしてやる...」


暫しの沈黙の末、一人が喉を震わせる。彼女の名前はリツ。現在の集落内で最も魔法の才に恵まれており、一部の上級魔法すらも操る事が出来る。最も、たかが子供の魔力量の為、威力は低いし直ぐ果てるので、初級や中級を扱った方が効率が良いらしい。僕は魔法には詳しく無いから良く分から無いけれど。

其の場の勢いに押されたのも有るだろう。僕等は次々に賛同の意を示した。若し僕一人だけで在ったとしても入学を希望しただろうが、矢張り仲間と謂うのは心強い者だ。里に残るのは、家族の温もりと甘えん坊のアル=パチスだけなのだから。


数日後、僕等は馬車に乗り故郷を後にした。


*****


「貴様等知ってると思うが、俺はリツ。そこそこの魔法なら使える、よろしくな」

「私はマイ、薬草とか毒草とか採取するのが趣味よ、よろしく」


二人とも堂々としてて、格好良いと思った。負けじと深呼吸をしてから口を開く。


「アルです、此の辺に生息してる獣位なら解体出来ます。よろしくお願いします」

「わっ...私はルラ=バロスですっ...特技は...ない...です...」


少し咬んだルラさんをリツさんが宥める。


「未だ見つかって無いだけだって、安心しな、貴様も必ず見つけ出せるさ」

「ありがとう...ございます...」

「俺ら仲間だろ?頼れって」


僕とマイちゃんが微笑む。ルラさんも少しだけ顔が明るくなり、其れを見たリツさんも口角を上げた。真っ白い歯が光った様な気がした。幻覚だとは思うが、若しかしたら光の魔法でも使って居たのかもしれない。

丁度馬車が止まった。


「お客さーん、夜休憩の時間ですよ~!」

「「はーい!」」


僕等は、めらめらと輝く炎を囲い、グルーボアの肉を炙って食べた。リツさんは自分の分の肉を運転手のコルグさんに分けて居た。集落内では色々な悪い噂が広がってたが、彼女が其の様な悪い子には見え無い。疑うのは矢張り心が痛む。其の事で頭が侵食され、良く眠れ無かった。


腰から尻に架けて陣々としてきた頃、馬車が勢い良く転倒した。僕等は慌てて外に出る。其処には数体の魔族が武器を構えていた。

是が魔族...僕等の家族の仇...。恐怖が込み上がって繰る。でも其れ以上に憎悪心が増幅する。


「ゔぁあ"あ"あ"あ"あ"!?!?」


僕の全身から深緑の靈氣が噴き出すのを感じる。背中から無数に溢れ出す紐状の波動が、魔族の群れを絡め捕り圧迫してく。


「アルすげぇ!!後は任せろ!!」


誰かが叫ぶ。誰...?昏くて寂しい。唯冷たさだけが全身を包み込む。其の度に怒りが錬成され、僕の体内から溢れ出して行く。呪いの種子が子宮内で育まれ、怨みとして地に堕ちる。微かな快感を感じ始めた。怒りって是程迄に心地が良い物だったなんて。


「喰らえバケモン!!【火槍弓】!!」


何だろう、不意に怒りが静まり返って逝く。如何して消えちゃうの?未だ味わって居たかった。心地良さが失せて逝く。抗え無い。でも何故だろう、何処か暖かい感覚に襲われる。深緑色の靈氣が漆黒に染まり、塵に変化する。風の流れに乗って天へ昇って征く。


「アル!!リツ!!すごいよ!!」

「かっこよかった...です...!」


...。


「俺だけじゃ詠唱間に合わ無かったかも...もっと詠唱速度上げないと...助かったよ、アル...」


...ッ!?


何が起こって居たんだろう、視界ではリツさんの顔が僕の事を見つめている。少し下に視線を擦らすと、僕の両肩がリツさんの腕に掴まれて居るのが分かる。沢山努力してる硬い腕の感触を感じる。


「大丈夫...か...?」

「なんのこと?」

「ならいい、無理すんなよ」


何を言っているんだろう、話に着いて行けない。でも、マイちゃんもルラさんも口を塞いで話そうとしない。


「お客さん方!!怪我は無いですかッ!!」


コルグさんが駆け寄って来る。ルラさんが頷くと、運転手さんはホッとした様子で頷いた。


「流石は兵士志望の方々だ。子供だからと心配し過ぎましたな、はっはっは。私は魔法も扱え無いし、武器も扱えませんから...皆様が居て下さり助かりました...」

「魔族が出没するなら傭兵でも雇えばいいのでは...?」


マイちゃんが口を挟む。コルグさんは少し申し訳無さそうな顔をしてから話を再開した。


「此の辺は魔族の出没情報は出て居ないのですよ...。万が一に備えて雇用するべきでしたね...街に着いたら雇ってみる事にします」


幸い馬車は動いた為、夕陽が暮れる前に目的地迄移動する事が出来た。


「皆様、到着しましたよ。テラスチェラ内最大級の都市である、チスアンタスです。」


*****


読んで下さりありがとうございます。誤字とか沢山あると思いますが、アル達の物語を温かい目で見守って頂ければ幸いです。

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