第15話


 その後カレンとレイは領主屋敷の客室で一泊した。


「泊めてくれて感謝する」


 翌日の朝。カレンとレイ、リオナとダリアの四人は駅に居た。

 液の作りは洋風であり、ヨーロッパ風の作りだ。

 風というのはあくまでそれっぽいだけであり、実物は全然違うからだ。

 液には列車が止まっている。

 形としては蒸気機関車そのものだ。だが先頭車両の中身は魔法道具マジックアイテム塗れだが。


 駅には朝早いというのに人も多くいるがカレンたちの傍に人はいない。

 領主であるリオナが居るからだ。遠巻きに見られている。


「ああ、また寄る事があった是非来てくれ。今度は土産も渡すよ」


 リオナは本心からそう言う。

 魔王軍時代は上からの命令としてあれこれやらされたが、魔王本人とはあまり会う事は無かった。

 だがこうしてあってともに食事をし会話をすれば何てことない、普通の人間だった。


「また今度会いましょうね! ダリアさん!」

「えぇ。また会いましょうカレン」


 カレンとダリアの二人はそう微笑み合う。

 その姿を見てレイは仲良くなれたようでよかった、とにこやかな笑みを浮かべる。

 そこに列車が汽笛を鳴らす。


「と、時間か。じゃあな!」


 リオナは笑顔で手を振るう。


「ああ、また」


 カレンとレイも軽く手を振りながら列車に乗る。


 列車の中身も昔さながらの蒸気機関車だ。


 席を買っている訳ではないため二人は空いている席に座る。

 二人席であり前の席には倒す事で机と成るプレートが付いている。


 そして列車が動き出す。

 最初こそ動きはゆっくりだが徐々に動きが早くなっていく。


「おぉー」


 カレンは今までに見た事無い、乗った事無い乗り物に若干の興奮をする。

 一応馬車や馬に乗った事はあるが列車は初めてだ。


 ぐんぐん速度を上げ、ついに時速百二十キロに突立つする。


「このまま約六時間は乗りっぱなしだが大丈夫か?」

「不息の指輪着けてるし大丈夫」


 不息の指輪は疲労・睡眠無効化、食事不要化の能力を持つ指輪だ。

 疲労無効化があれば長時間座りっぱなしでも体に負担は掛からない。



 そうして長い時間が流れる。

 カレンは暫くは流れる景色を見て笑顔を浮かべていたが三十分も経つと同じ光景ばかりで飽きてくる。

 この国の地形は平で、山もあるにはあるが地理的に遠い位置にある。

 その為ただの平原が延々と続くわけで、見てて面白い物はない。


「……トランプでもするか?」


 レイはそんなカレンを見え念のために持ってきたトランプを取り出す。


「する!」


 カレンはここぞとばかりに食いついた。


 その後暫くはトランプで遊ぶ。

 この国にもトランプはある。何なら麻雀もすごろくもTRPGもUNOもある。

 全て三百年前の賢王が齎した物だ。



 その後三時間ほどUNOとかトランプした。



「車内販売いかがっすかー」


 そうしているとやる気のない店員がカートを押しながら歩いて来る。


「そう言えば昼飯買ってなかったな」


 時刻はそろそろ十二時近い。昼飯時だ。

 だがカレンもレイも飯を買うのを忘れていた。

 というか列車の時間が早いので買う時間が無かった、というのが近いが。


「じゃあ買おう。すみませーん! 商品見せて貰っていいですかー!」

「どうぞー」


 店員が二人の前までカートを押してくる。

 売っているのは弁当や軽食だ。飲み物も売っている。


「私はこれで」

「余はこれだな」


 カレンはハンバーグ弁当を。レイは牛タン弁当を選んだ。


「合わせて三千二百セラっす」

「ここは余が払おう」


 レイは無限収納の腕輪インフィニティ・ボックスリングから財布を取り出し紙幣三枚と百セラ硬貨二つを出して支払う。


「ありがとうざいやしたー」


 店員は雑な返事をするとまたカートを押して歩いてってしまう。


「少し早いが食べようか」

「そうだね!」


 その後二人は弁当を食し、その後の時間もゲームして潰した。





 ■



「着いたー!」


 カレンは首都エルフェリアについて両手を上げて万歳しながら大地を踏みしめた。

 といってもエルフェリアの駅に着いただけだが。

 駅は大きい。乗り場が六つもある。


 その分人数も多く、人間や多種多様な種族が居る。


「邪魔に成るから動くか」

「はーい」


 という訳で二人は駅を歩く。向かう先は冒険者ギルドだ。

 冒険者ギルドでエルフェリアのいい宿を紹介して貰うのである。

 白金級冒険者ともなると多少はそう言うのに手を回してくれるのだ。


 広大な駅で若干迷子に成りながら歩き外に出ると其処は広大な首都だ。


 道路も広く車道と歩道で別れているし人も多い。

 そして冒険者の数も多い。武装した冒険者達も数多くいる。


 二人は駅内で地図を見ていた為冒険者ギルドへの道が分かる。


「魔導車も走っているな」


 レイが車道を見ればそこには車があった。

 現代日本の車とさして変わらない車だ。当然これも魔法道具マジックアイテムである。

 昔は複数の魔法道具マジックアイテムを無理矢理くっ付けて一つの車として動かしていたが今は一つの魔法道具マジックアイテムとなっている。

 ただこれには二種類ある。使用者の魔力を消費するタイプかエネルギー源無しで動くかの二種類だ。

 前者の方が割と安く買えるが呪文詠唱者スペル・キャスターでないと運用が難しいという欠点がある。

 後者はそこそこ高い。一軒家ぐらいには高い為持っているのは高位の冒険者か貴族ぐらいのものだ。だいたい安くても三千万セラする。

 レイは一応後者の物を一台買って持っているが宝物庫の肥やしになっている。


「タクシー使うか?」

「タクシー? 何それ?」

「魔導車で目的地まで運んでくれるサービスの事だ」

「何それ凄い! ……ちょっと待って、それ幾らするの?」


 カレンも昔レイが買った魔導車に乗ったことがある為経験者である。

 だが同時に魔導車の高さというのを知っている。その為魔導車を使ったサービス等余程高いのだと薄々感じとる。


「前乗った時は一万セラぐらいだったな」

「たっか!いやけどそれぐらい普通?けどちょっと払うには気が重いね……」

「余が払うが?」

「お父さんに奢って貰おうのもなしだよ!」


 カレンは断固として拒否する。そんな余裕はあるが払いたくないのだ。

 レイは娘とのタクシーに乗りたかったが娘が拒否するならとシュンとして諦めた。


 その後二人は二十分程歩くことで目的地である冒険者ギルドに辿り着く。


 冒険者ギルドは昼過ぎだというのに込んでいた。

 依頼を受けて終えた冒険者やこれから依頼を受ける冒険者が多いのだ。


 カレンは空いている受付に赴く。そこは禿げたおっさんが受付をしていた。


「いらっしゃいませ……白金級の方ですか」


 受付はカレンの胸元に光る白金のプレートを見て目を細めた。

 エルフェリアにも二パーティしかいない白金級冒険者。だが見た事の無い顔。

 最近噂の黒風だろうか、と受付は考えカレンを見る。


 だが娘に何変な視線向けてんだ、というレイの顔を見て受付の男は気まずそうに視線をずらした。


「え~と、冒険者ギルドと提携している宿を教えてほしくて……」

「わかりました。少々お待ちください」


 受付は下の棚から資料を一つ取り出す。


「白金級と成りますと此方の宿がお勧めですね」


 本に乗っているのは雪華の館という宿屋だ。

 高級宿屋の一つであるが白金級冒険者ならばたいした出費には成らない宿でもある。


「ありがとうございます。ここからどういけば?」

「それですとギルドを出て右手に真っすぐ──」


 カレンとレイは道案内を受ける。


「こちら、ギルドからの紹介状になります。受付にお見せになってください」


 受付の男はカレンに紹介状を手渡す。

 カレンは「ありがとうございます」と受け取った。


「それじゃあ宿に向かうか?」

「その前にどんな依頼があるかだけ見てこー」


 という訳で二人はクエストボードを見に行く。


「色々あるが……大半はダンジョンの探索だな」


 このエルフェリアから馬車で二十分の距離にダンジョン凍てつく王廟がある。

 全三十階層のダンジョンであり、この国最難関のダンジョンとして知られている。

 だがそれは情報系魔法で雑に探知した結果であり現状の到達最高階層は十五階層だ。

 凍てつく王廟には五層ごとにボスが居り十五階層には亡霊の重騎士というアンデッドタイプのボスが居る。

 非実体、アストラル体のボスモンスターであり特殊能力スキルとして配下の亡霊召喚能力も持つ。

 本体自体は三十レベル前半程度だが配下も二十レベル台と三十レベル程度では少々キツイボスモンスターである。


 そして依頼の大半はこのダンジョンからのドロップアイテムを集めて欲しい、という物が多い。

 一応エルフェリア郊外の森の探索依頼もあるが数は少ないし報酬も少ない。


「今日はもう遅いけど、明日はダンジョン行く?」

「行って見たいが……シーフもヒーラーも無しはきついだろう」


 ダンジョン探索においてシーフの存在は不可欠だ。

 トラップや敵の探知をする役職は居て貰わないと思わぬところで即死しかねない。モンスター部屋等に入ったらおしまいな事も多い。


「じゃあ仲間募集の張り紙も出そう」


 クエストボードの横には何かあった時用の掲示板がある。其処に有料だが紙を張り出す事が出来る。


「明日に募集かけておこう」


 という訳でカレンは受付から紙を貰いペンを借りて募集用紙を書く。

 それを掲示板に貼っておく。ペンは返した。


「じゃあいこー」


 という訳で二人はギルドを出ていった。



「エルフェリアにはどれだけ泊まる?」


 宿へと向かう途中レイはカレンにそう問いかける。


「そうだねー。凍てつく王廟攻略したいから……最低でも一ヵ月かなぁ」

「そうか。なら全力で攻略せねばなるまいな」

「うん! お父さんも頑張ってね!」


 ギルドを出て二十分程歩くと目的地である雪華の館に辿り着く。

 五階建ての大きな建物だ。石造りであり外見からして高級感が漂う。

 旅館というよりホテルというのが正しい感じがする。


 魔法道具マジックアイテムの自動ドアを潜って中に入る。


 中には冷暖房用の魔法道具マジックアイテムで空調は整っている。

 真っすぐ進めば受付が、左手にはラウンジ、右手には宿泊部屋への階段とエレベーターもある。

 この世界には魔法道具マジックアイテムのエレベーターもあるのだ。


 受付に進むと受付の女性が対応する。


「いらっしゃいませ。当ホテルへようこそ。紹介状はお持ちですか?」

「はい。ここにあります」


 カレンは受付嬢に紹介状を手渡す。


「拝見します…………はい。冒険者ギルドからの紹介ですね。何泊のご予定で?」

「一ヵ月程お願いしたいんですけど……」

「そうなりますと事前支払いになります。よろしいですか?」

「大丈夫です」

「でしたら一ヵ月で百五十万セラになります」


 大金である。一拍約五万セラかかると思えば相応の値段だ。

 だが払えない金額ではない。白金級ともなると一つの依頼で十万セラの報酬を貰う事も少なくない。

 そこに倒したモンスターのドロップアイテムの売却等も含めれば余裕で支払える金額だ。


「わかりました。カード払いでいいですか?」


 白金級以上の冒険者はブラックカードの所持が出来る。

 勿論普通の貴族なども持っているが。

 カードと銀行がリンクしている為カード払いが出来る魔法道具マジックアイテムの一種だ。魔法道具マジックアイテムは便利である。


「はい。こちらの魔法道具マジックアイテムに通してください」


 カレンは言われるがままカードをスキャナー型の魔法道具マジックアイテムに通す。

 これで支払い完了だ。


「はい。ありがとうございます。お部屋まで案内しますね」


 受付嬢は受付から出てカレンとレイの二人を連れてエレベーターに乗る。

 四階までエレベーターで昇りって降り、部屋に案内する。

 部屋を開けて中に入ると受付嬢は鍵を手渡す。


「こちらが鍵です。無くさないようお願いします」

「わかりました、ありがとうございます」

「ではごゆっくりとおくつろぎください」


 受付嬢はそう言うと部屋を出ていってしまった。


「じゃ、少しゆっくりするか」

「そうだねー」


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