第26話 罠カード発動。落とし穴!4

 

「よし、コンロの準備はできた。次は炭火に火をつけるか。」


 壮真は折り畳み式の焚き火台を設置し炭の準備をする。


(炭はコンロであぶったら早く着くからそうするか・・・)


 壮真は横でまだか~まだか~とゾンビのように徘徊しているサーヤのために手早く火をつける方法を選んだ。


 まずガスバーナーを設置し火をつける。


「ここでこれの登場!じゃーん!『火起こし・火消し缶』これは炭や薪の火起こしと火消しが出来るスグレモノだ!」


 壮真は銀色の筒を取り出しサーヤに見せる。


「なんだ、これは?バケツか?」


 サーヤは銀色の筒を手に取って不思議そうに眺める。


「これは、基本的には火消しツボの役割をするものだ。焚き火した後、火を消さないと山火事とかになったりするだろ、それを防ぐために火消しツボが必要なんだ。従来の火消しツボは本当にツボにフタがついているだけだったが・・・」


 壮真はサーヤから缶を受け取ると、上にあるフタを外し、次に底のフタも外した。


「このように底も外れる、筒の底には網があって炭とか薪が落ちないようになってある。実際やってみたほうが早いか。」


 壮真は缶の中に炭を詰め始めた。


「まずはこうして炭とか薪とかを詰める。で、ここに穴があるだろ?」


「うむ、たくさん開いているな」


「これがポイントだ。空気が下から入りやすくなって、火が一気に育つんだよ。」


「ほう・・・空気を操るとは・・・これは魔道具か?」


「だから違うって」


 壮真はガスバーナーを取り出し、缶の底に置き火をつけた。ボッ・・・・・・パチパチパチッ。


 缶の内部で炎が勢いよく広がり、煙が上へと吸い上げられていく。


 サーヤは目を丸くした。


「なっ・・・!?なぜだ!?火が・・・勝手に上へ吸い込まれていくぞ!」


「これが煙突効果ってやつだよ。熱い空気が上に逃げるから、下から新しい空気が入って、火がどんどん強くなる」


「煙突・・・?熱い空気・・・?うむ・・・よくわからんがすごい!」


「理解しようとする気はあるんだな」


 壮真とサーヤがそんな話をしている間にも、缶の中の炎が勢いよく燃え上がり・・・


 ゴォォォォッ!


「ひゃっ!?な、なんだこの火力は!?」


「これがこの缶の火起こし機能だよ。普通に火をつけるより何倍も早く燃え、炭に火が付く。本当なら焚き火から火をおこして炭に火をつけるといった、のんびりやるのが好きなんだけどね・・・今日はお腹を空かせた猛獣がいるから手早くやってみました。」


「猛獣とは私のことか?ひどいのだ!こんなに凛々しい猛獣などいないのだ。」


「誰が凛々しいって?そんなところみたっけな?」


 そんな壮真の軽口に対し「むう、壮真殿は意地悪なのだ。」とサーヤはほほを膨らませる。


「もうそろそろいいかな。」


 缶の中を見ると炭が真っ赤に燃え十分な熱気が出ていた。壮真は中の炭を取り出し折り畳み式の焚き火台へと炭を並べた。


「大きいグリルだったら強火から弱火まで作りたいけどこれは小さいから気にしない。炭を並べたら、網を置き準備完了!」


「待ってたのだ!早く早く!」


 よだれが今にも零れ落ちそうな顔をしたサーヤをみて、


「まあまあ、焦るな!まずはタレがいるだろ?」


「もちろんなのだ!ああー!このタレのにおいたまらんのだ♪」


「では焼くぞ。」


 壮真は肉を網に置いていく。ジュウーー!!!という音と共にあたりに肉の焼ける香ばしいにおいが漂ってくる。


「おおお!いい匂いなのだ。よだれが止まらんのだ―!もういいか?もういいか?」


「まだ置いたばかりだろ。待て待て!もう少し・・・・・よし、いいぞ!」


「いただきまーーーーーすなのだ。」


 サーヤが肉を取りタレにつけ満面の笑みで肉を口に放り込もうとした瞬間!!


 ガァァァァァァァァァァァァァ!!!!


「危ない!!!!!!」


 壮真がサーヤを突き飛ばした!


「ぎゃあふん!」とサーヤは後ろへ吹き飛び尻元を着いた。


「痛たたたた、何するのだ!」とサーヤが前を見るとそこには黒く大きな物体が肉をむさぼっていた。


「サーヤ、熊だ。気をつけろ。」


 壮真が発した言葉でサーヤはすぐに剣を構え熊と対峙する。


「ちくしょおおおおおおおお!せっかくの焼き肉が!!!!貴様!!!絶対にぼこぼこのぐちゃぐちゃにしてやるのだ!!!」


「こいつマジでキレてる。落ち着かせないと。やばいな・・・」


 壮真は激怒しているサーヤを見て素早く作戦を考えた。


(早く考えないと、サーヤが無駄にスキルを放ちそうだから何とかしないと・・・罠の場所はあそこか・・・あそこに誘導しないとな・・・よし!)


「サーヤ!落ち着け、罠に誘導するぞ!少しずつこっちへ誘導してくれ。」


「はっ!そうだった!罠に落とすんだった。落ち着け私・・・・・よしっ!!!ほらっこっちへこい熊野郎!『タウント』!うおおおおおおおおおおおおお!」


 サーヤがタウントと口にし叫び声をあげた瞬間サーヤの体が光りだした。それを見た熊はサーヤを攻撃し始めた。


「サーヤ!大丈夫か?なんだそれは?」


「大丈夫だ。これは私のスキル『タウント』だ。獲物の注意をひきつけて全部の攻撃を受ける騎士専用のスキルだ。」


「お前そんなスキルがあったのか、早くいってくれよ。そんな便利なスキルがあるなら考えなくても誘導できそうだな。サーヤ一人でも大丈夫か?」


「任せろなのだ!そっちの罠に連れて行くから準備をお願いするのだ。」


 熊の攻撃を剣で捌きながらサーヤは壮真に微笑む。


「わかった、決して無理はするなよ。」


 壮真はサーヤの言葉を信じて罠のほうへ向かい起動する準備を行う。


 ガキッ!!ガキーーン!と剣と爪が交わる音とともにサーヤの息遣いが激しくなる。


(つ、強い!ガガブルに匹敵するほどの力だ。)


「でも、焼き肉の無念をはらすのだーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」


 サーヤは熊との腕力差をものともせずに攻撃を捌き、少しずつ熊を罠へと誘導する。


「サーヤ!いつでもいいぞ!」


 壮真の声が聞こえ、サーヤは全速力で後ろへ走り出した。熊はサーヤを逃がすまいと後を追いかける。


 サーヤは素早い動きで罠を避け壮真の後ろにつく。


 ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!っと熊が壮真たちめがけて襲い掛かった瞬間・・・


 ズドン!!!


 熊が落とし穴に落ちた!


「今だ!」


 壮真は熊が落ちたのを見て罠を起動させるため素早くナイフを振り下ろした。


 ビュン!!グサッ!!!!ぎゃあああああああああああああああああああああおおおおおおおおお!!!


 熊の叫び声と共に見事に杭が熊の頭と首元に刺さった。


「やった!!!」


 杭が刺さった熊を見てサーヤが叫ぶ、しかし・・・


「まだだ、最後まで気を抜くな。」


 壮真がサーヤへ指示を出す。


(熊はまだ暴れている。早くとどめを刺さないと・・・よしっ!!)


 壮真は手のひらに魔力を集めだした。魔力はどんどん集まりソフトボールぐらいの大きさになった。


「紅蓮の深淵より這い出ずる焔よ、 我が魂を焦がし、世界を焼き尽くす業火となれ! 契約の名の下に、燃え盛る輪を放ち、 全てを灰へと還す――ファイアボール!」


 壮真の手のひらから発射された火の玉は顔のあたりに命中し熊の顔が猛火に包まれた。


 ぎゃあああああああああ!!!熊はさらに叫び声をあげ暴れだした。


「まだ倒れないのか?このままじゃ罠がもたん・・・、くそっ・・・」


 壮真が次の手がなくあきらめそうになった瞬間・・・


「いい加減に倒れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


 後ろからサーヤが剣を掲げ壮真の横を通り過ぎた。


 サーヤは剣を振り下ろし熊に命中した瞬間!!


 ドカーーーーーーン!!!サーヤのスキルが放たれた。


「どうだ!参ったか・・・」


 スキルを放ち力尽きるサーヤ・・・その先には熊が静かに横たわっていた。


「か・・・勝った・・・・やったーーー!勝った!よくやったサーヤ!!!」


「フッ!私を誰だと思っているのだ。勝って当たり前ではないか!!」


「そのセリフも寝ころびながらじゃなければカッコいいんだけどな・・・」


「「ぷっ・・あははははははは!!」」


 二人の笑い声が静かな森の中に響き渡った。


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