第11話 ついに……それとも?
道のりは静かだった。静かすぎた。
荷馬車の揺れが俺を狂わせていた。それと、フユネの風についての絶え間ない呟き。時々いびきをかくと小さな気流を発生させていた。
感心すべきか心配すべきか分からなかった。
しかし最悪なのはそれではない。最悪なのは絶対的な退屈だった。
何も起こらない。チュートリアルAIの振る舞いをする盗賊たちの後、何も起きなかった。ゼロ。完全な空白。
もちろん、理由は分かっている。誰も空の荷馬車を襲わない。盗賊の基本ロジックだ。しかし少なくとも……分からない……新しい生き物とか?突然変異したウサギ?感情を持つ石?
それとも単に俺がアイデアを使い果たして、これ以上何も創造しなかったのか?
奇妙な状況だった。一方では感謝すべきだ。俺の青春期の無能さに苦しむ存在が少なくなる。他方では……これは空っぽの世界を意味する。そして俺は十四歳の自分をかなり信頼していた。きっと意味不明な混合生物の壮大な図鑑で二百ページを埋めただろう。
今それらはどこにいる?
「女神が……あなたを崇め……あなたの命の上に……光を与えん……ヒーリング!」
俺は固まった。
フユネ。眠っている。両手を伸ばして。そして手のひらから緑色の光が放射されている。
光。緑色。回復魔法。
いつから回復魔法が使えるようになったんだ?
「何かあったか、ダイキさん?」
ユミズキが瞑想をやめた。伸びをしながら俺を見ている。完全に落ち着いて。
「見なかったか?」フユネを指差した。まるで超常現象を指差すかのように。「回復魔法を使っている。彼女が。風専門の魔道士が。今まで一度も、絶対に回復魔法を使ったことがないのに」
ユミズキは「この世界で何かに驚くの?」という表情で俺を見た。
「ああ、それ……見てないけど、あなたがそう言うなら、起きたんでしょう。もしかして寝てる時だけ発動できるのかも」
……かもな。
この糞世界ではその可能性は完全に合理的だ。物事がここでどう機能するか知っていれば、寝ている時か、歌っている時か、逆立ちしている時にしか回復魔法が使えないことに驚かないだろう。
「山が見えたぞ!」
御者の叫びが五台の荷馬車を貫いた。俺たちは一番後ろにいたが完璧に聞こえた。
座席から落ちそうになった。
「やっと!」立ち上がった。「時間かか──」
突然寒さが襲ってきた。
二十五度からマイナス三度まで一秒で。俺の熱意は喉で凍りついた。不快な吹雪が服を貫いた。
震える手で、フユネの両親にもらったコートを着た。
そして魔法のように……寒さが消えた。
完全に。
まるで存在しないかのように。
魔法的に加工されたスライムの繊維。もちろん。当然前世の技術より優れている。
このコートから出ないのが一番だ。絶対に。これを着たまま寝よう。
一時間後、荷馬車は村で止まった。
独特な……村だった。
人々はコートなしで歩いている。子供たちは雪の中で遊んでいる。何人かはそれを食べている。
そして寒かった、確かに。しかし雪は……
雪が雪ではない。
試してみた。もちろん試した。狂気を確認しなければならなかった。
綿菓子の味がした。特に。
爆発したかった。叫びたかった。宇宙になぜなのか問いたかった。しかしちょうどその時、完全に青い空から雪が降り始めた。雲もない。風もない。ただ……現れている。
ほぼ瞬時に俺を覆った。
ギルドに向かった。唯一の論理的選択だった。寒くない唯一の場所、震えることなくシャワーを浴びられる場所、そして空から降る砂糖に茶色い染みを残すことなくトイレを使える場所。
優先順位。
全員が共同浴場でシャワーを浴びた後──驚くべきことに、普通で機能的だった──続ける準備ができていた。
しかし御者が俺たちを止めた。
「一日待たなければならない。チーズは明日回収の準備ができる」
「明日?」尋ねた。「でもチーズはもう準備ができている。もう配達できる」
「精製を経なければならない」
「精製?」
「はい。とても繊細な過程だ」
「箱に入れること?」
「……それより複雑だ」
「そうなのか?」
「絶対に」
違う。絶対に違うと確信している。
しかしここにいる俺たち。丸一日待つ。綿菓子が降る村で。「精製」を経るチーズのために。それは間違いなく箱に入れるだけだ。
小さな勝利。
本当に、本当に小さい。
一日は予想より早く過ぎた。
そして今、俺は緊張していた。
二ヶ月。チーズを探して丸二ヶ月。二ヶ月の旅、欠陥AIの盗賊、哀れに這う巨大カエル、そして今……こんなに近い。
こんなに目標に近い。
俺のサンドイッチに。
でも……まだハムが足りない。
豚が神聖とされているのにどうやってハムを見つける?寺院に潜入しなければならないのか?宗教的な豚を盗むのか?神の意志に加工肉が含まれると司祭を説得するのか?
関係ない。一度に一つの問題。
まずチーズ。
顔を叩いた。二回。目を覚ますために。集中するために。
「フユネ、起きろ……行くぞ」
何もない。
宿の自分のベッドに丸まっている。毛布に包まれてブリトーのよう。金髪の一房だけが見えている。
「フユネ」
理解不能な呟き。
「フユネ、チーズが準備できた」
「……あと五分……」
「三十分前にそう言った」
「……嘘ついた……」
ユミズキはもう準備ができていた。もちろん準備ができていた。ドアのそばに座っている。おそらく夜明け前から起きていた。おそらく眠っていない。おそらく瞑想が彼女にとっての休息なのだ。
「助けが必要か?」目を開けずに尋ねた。
「いや。もう分かった」
ベッドに近づき、毛布を掴んで引っ張った。
フユネが転がった。文字通り床に転がり落ち、鈍い音を立て、そこに留まった。静止したまま。
「……朝が嫌い……」
「十時だ」
「……十時が嫌い……」
最終的に──十五分の懇願、空虚な脅し、何か甘いものを買うという約束の後──彼女を部屋から出すことに成功した。
村は予想より活発だった。人々があちこち動き回り、箱を運び、物資を整理している。そして綿菓子の雪は降り続けている。何人かの子供たちが口を開けてそれを捕まえようと走っている。
荷馬車に着いた。
そして驚いたことに、箱を測っていた。
測っている。箱を。
メジャーで。寸法を確認している。メモを取っている。
本当に「準備ができているか」見ている。
整理するものは何もない。チーズを運ぶだけだ。文字通り荷馬車に箱を入れて出発するだけ。しかしここにいる彼ら、まるで宇宙船の部品であるかのように各糞箱を測っている。
でも分かるか?もうどうでもいい。
「フユネ、行こう、乗れ」
「もう少し寝れない?」足を引きずって不平を言った。「荷馬車そんなに快適じゃない……杖が落ちる……」
何も言わなかった。
この時点で俺の沈黙は千の言葉より価値がある。
彼女は分かっていた。
諦めてため息をつき、それ以上文句を言わずに乗った。
しかし乗る時、態度が変わった。前を見て、残りの道を見て、少し元気になったようだった。
「一歩ずつ……」呟いた。
「何か言ったか、ダイキさん?」
彼女たちの方を向いた。膝に杖を置いたフユネ。すでに瞑想の姿勢で座っているユミズキ。
「ありがとう……付き合ってくれて。君たち二人とも」
沈黙。
二人は互いを見て、それから俺を見た。何と答えればいいか分からなかった。間に気づいた。俺の言葉を処理する方法に。
しかし彼女たちにはこの世界の他の人々と比べて何か違うものがあった。
何か……より本物の。
もしかしたらAIを使って創造されたから、より適応できるのかもしれない。もしかしたらもっと何かがあるのかもしれない。まだ確信が持てない。
ただ俺の脚本が一度くらい俺に有利に働くことを願っていた。
チーズを手に入れること。
問題なく戻ること。
頼む、頼むから「そして氷のドラゴンが現れた」とか「山は実は眠っている巨人だった」とか、他の不必要な壮大な糞を書いていませんように。
ただ……チーズ。
それ以上何もいらない。
……頼む(ハハハ)
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