ドラグマの亡霊
るぅと-えふ-
プロローグ
「今日をもって貴様ら訓練兵は訓練兵ではなくなる!」
教官の声が響き渡る。
「今日から貴様らは、誇り高きディアズ帝国の兵士として、戦場を駆け、敵を打ち倒し、国民の盾とならねばならん!」
「だが!貴様らにはそれができる!今、貴様ら第12期訓練兵は、ここ帝国軍隊学校の卒業を宣言する!」
「「はっ!!」」
ラルフは軍隊学校を卒業した。これから所属が決まり、そこで活躍していくのだ。そしてゆくゆくは英雄となり、帝国を繁栄に導く。それが役目。いつかまた12期生で集まろう、共に酒を飲もうと約束した。
その約束は果されない約束だと、その時は誰も思わなかった。
卒業から4日後。成績は中の上あたりで卒業したラルフは人型戦術兵器であるフライアーマーを駆り、宇宙で戦う戦場の華である部隊へ所属が決まった。
同期で友人のフリードリヒ・ヴァイセンベルクも同じ部隊だと言う。
「なあフリードリヒ、俺らの機体ってなんだと思う?」
「さあ?でも新兵だからなぁ、汎用量産機じゃない?」
「って言うと…ドラグマとか?」
するとフリードリヒは少し笑い、
「よく知ってるね。」
と小馬鹿にしてきた。
「おやぁ?あなたの方が詳しいのでは?フリードリヒ殿。なにしろお前、
と言い返すと、フリードリヒは口を塞ぎ、
「周りに聞かれたらどうすんだラルフ!あれは僕の黒歴史なんだ!やめてくれよ。」
と焦る。こいつと話すのは楽しい。決して俺はホモじゃないが、結婚するのであればこういう奴としたほうが良いのだろうと真面目に思うくらいには大切な友人だ。
「活躍できるかな。」
フリードリヒが呟く。
「できるさ。俺達なら。そうだろ?」
「うん。そうだね、ラルフ。」
と、そこに慌てた様子の伝令兵が待機所に飛び込んできた。
「緊急伝令です!土星プラントのヤードルナ連邦の
待機所は一瞬にして大騒ぎとなり、熟練した兵士たちが慌てて持ち場へと急ぐ中、専用機すらないラルフたち12期生はなにをすればいいか分からず、焦ることしかできなかった。
そこに担当上官であるダスティン・アタライ中尉が叫ぶ。
「12期生諸君!こっちに来てくれ!」
ダスティン中尉はラルフたちを連れ、ガレージに向かった。
「これが君らの機体であるドラグマだ!パイロットスーツはコックピットの中にある!もっと落ち着いたお披露目にしたかったんだが仕方がない!荷物はそこら辺に置いとけ!直ちにパイロットスーツに着替えて搭乗し連絡せよ!」
「返事!!」
思い出したかのようにラルフとフリードリヒは
「「はっ…はい!」」
と返事をする。
ラルフたちは急いでスーツに着替え、コックピットに搭乗した。訓練で嫌ほど見た景色だが、緊張と焦りでそれどころではない。
「こちらラルフ二等兵、搭乗完了しました!」
「同フリードリヒ二等兵、搭乗完了です!」
「うむ、私が君たちの上官であるダスティン・アタライだ。これから初陣となる。だが新兵に酷な事は言わん。生き残るんだ。私の後ろについて来るだけでいい。ま、精々死なんように頑張れ。」
その時ガレージの大扉が開き、
「ダスティン・アタライ、カラミティ、出る!」
それに続き、
「ラルフ・シグムント、ドラグマ、出ます!」
「同フリードリヒ・ヴァイセンベルク、ドラグマ、出ます!」
カタパルトから機体が射出され、かかるGに少し体を強張らせる。
それからの事はよく覚えてないが、首都防衛には成功した。しかし、損害が大きく、勝利とは言えないものであったらしい。必死にダスティン中尉のカラミティについていった。直ぐ側で爆発が起きたり、目の前で味方機が爆散したりしたが、それどころではなかった。ダスティン中尉は3機撃墜したらしいが、それすら気が付かなかった。
唯一幸運だったのは、ラルフとフリードリヒの2人とも生きていたことである。
14人いた12期生は4人まで減っていた。
のちにこの日を「血みどろの開戦」と呼ぶようになった。
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