第10話 痣が治るまで



目覚めた私は、ぼんやりとした頭を抱えながらベッドを出ると少しだけ朝日が差し込んでいるカーテンを開けると眩しさに思わず目を細める。

体に違和感を感じながらも眠気を飛ばそうとシャワーを浴び、湯気に曇った鏡の前に立つと、タオルで髪を拭きながら、鏡の曇り手で拭えば、鏡の中に映った自分の肌に衝撃が走った。

そこには、昨日、颯に殴られた場所がくっきりと痣になっていたのだ。


「.....ひどいお腹」


小さくつぶやき、私はため息をついた。



制服に着替えるために部屋へ戻ると、軽めに化粧を済ませれば、最後にリップを付けようと唇に触れる。そして思い出す、昨日の颯とのキスを。


唇にそっと指を触れると、胸がざわついた。


キス、したい。

誰かに、心から愛してもらいたい。

他の誰のことも考えられないくらい、

夢中にさせてほしい。


そんな思いが、胸の奥から湧き上がってくる。




「.....そうだ、久しぶりに修二くんに会いに行こう」




私は、制服の他に私服を選び、化粧ポーチと、香水と共に鞄に詰めた。





リビングに下りるとそこにはすでに颯がいて、こちらを軽くチラ見すれば気まずそうにしながら口を開く。



「おっ、おはようございます美優さん.....(気まずっ)」


「.....」


「今日は珍しく早起きですね.....(やば、シカト?)」


「.....」


「美優さん.....?(なんにもしゃべんねぇ.....)」



私は黙ったまま、制服の裾を少し上げて、腹部の痣を颯に見せた。すると彼の目が一瞬見開かれ、息を呑んだのが分かった。



「痣が消えるまで、颯とは話してあげない!」



そう言い捨てて、私は颯に向かって舌をベーっと突き出した。



「な、なんだとっ! このクソっ.....!(誰のせいだと)」



「颯!美優さんに向かってその口の利き方はなんだ!」



いつの間にか絢斗が現れ、颯をきつく叱る。

颯は不満そうに眉をしかめながらも、渋々頭を下げた。



「....;絢斗さん、すみません(怒られたじゃねーか)」

「おはようございます、美優さん」

「.....おはよう絢斗。私、今日はもう出かけるわ」

「朝ごはんできてますよ?」

「いらない。それと.....明日、土曜日でしょ。友達の家に泊まるって、父さんに言っといてくれる?」

「分かりました、美優さん」



鞄を肩にかけ、家を出るとすぐに呼び止められた。颯が後を追って来たのだ。



「美優さん!(待てよ)」

「.....何よ」

「明日、お友達の家まで迎えに行きますので。帰る時間がわかったら、連絡ください(迎えに行かないと)」



もう痣の事を忘れているかの様に話しかけてくる颯にはもう少しお灸が必要なのかもしれない。私は再び舌を出す。


「べーっ」


そして私は、颯の視線を背中に感じながら、足早に駅へと向かった。



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