転生探偵の憂鬱

どんまち

プロローグ

 僕は知っている。

 

 推理とは、自らの持ち得る知識でしかないということを……。

 そう考えると、転生してきたはずの僕が探偵のように扱われているのは、いささか奇妙なものだ。

 とても奇異な上に、

 不可思議とも言えるかもしれない。

 なぜかというと、この世界において僕は、圧倒的な弱者として存在しなければならない立場だからだ。

 

『魔法は無法』


 魔力だのなんだと言って、この世の全てを超越してくる卑怯とすら言える存在だ。

 元々人間ということもあり、悔しいことに僕にはなんの抵抗もできない――まぁ、する必要があるわけではないけど。


 そもそも……

 

 僕はなぜ推理なんてしているのだろう?

 そもそもなぜ僕は死んでいないのだろう。

 

 ……あの時死んでいたはずなのに。

 幸せに死んだはずなのに。

 

 きっとこれは――お金のためじゃない、ましては新たな事件を探しにいくような事件ジャンキーというわけでもない、そもそも自分のためではないだろう。

 

 ――それはきっと、彼女のためだ。

 

 深い理由があるわけではないが、僕がそばにいなければ彼女はすぐに殺されてしまうはずだ。

 彼女にはいつも不吉な運命が迫る。

 

 僕は知っている――なぜだか知っている。


 この物語は、異世界を生きる僕が推理をしたり、しなかったりするかもしれない物語だ。

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