そっと心に寄り添ってくれる物語

読み進めるほどに静かな温度が胸に広がっていく、とてもやさしい物語……そう感じました。

1974年という時代の空気が丁寧に息づいており、登場人物たちの心の揺れと自然に重なり合っていく描写がとても素敵です。

背景が物語を支えるだけでなく、人物の感情そのものとして寄り添ってくるようです。

また、作者さまの筆致はとても繊細で、言葉にされない思いや沈黙の間合いに、深い情緒がそっと宿っています。視線の動きや、ふとした仕草、交わされる短い言葉の中に、登場人物それぞれの想いがやわらかく滲み出ており、読んでいて心がほどけるようでした。

読後には、あたたかさと切なさがゆっくりと混ざり合うような余韻が残り、しばらく物語の世界に浸っていたくなる作品です。

静かで、やさしく、そして深く心に残る物語……続きが楽しみです。

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