進学した高校で、藤野冬佳は自転車に乗って行き過ぎただけの男子生徒へ一目惚れをした。彼――春松優斗は文芸部員の上級生で、その作品にまで惹き込まれた彼女はそのまま入部を決める。そして密かに想いを深めていったのだが。ずっといっしょにいる幼馴染みの入部をきっかけに、彼女は一目惚れをした自分と向き合わされることとなる。
表現が豊かですばらしい。用いられている言の葉というものがとにかく綺麗で、且つ可角が尖っていて。だからこそです。冬佳さんの日常が恋によって研がれていき、仄かな輝きを帯びる様が視えるのは。加えてその装飾の彩が、幼馴染みである水村秋乃さんをきっかけに光を削がれ、重く鈍いどろりとしたものに成り果てる様子が剥き出されるのは。
この流れを言い換えるなら青春の闇となりましょうが、こうまで叩きつけられるのは著者さんの妥協ない文章表現と、容赦なく冬佳さんを追い立て、追い詰めていく姿勢あればこそなのです。
ひとりの少女の内で演じられる恋の始まりから終わりまでを書き切った本作、ひと言で表せば「思春」です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)