EP.021

「...んん」

魘(うな)されながら辺りを見渡すと、病院の一室にいた。

周りには両親が立っていた。

「やっと目を覚ましたのね!安心したぁ...」

お母さんはそう云って笑顔で涙を流していた。お父さんは誰よりも涙を流し、嬉しさでか声も出ていなかった。

『1週間、家族と最後を楽しむかぁ...』

心の中でポツリとそう軽く呟いた。


⦿   ⦿   ⦿   ⦿   ⦿


あの後、両親に1週間後にこの世を旅立ってしまう事と、この世を去ってしまっても大丈夫だという事、向こうの世界でも仲間がいること...などなど伝えると、最初は驚いていたが、ほっとしたように抱きついて来た。

今まで抱きつかれる事が鬱陶しく感じていたが、別れの際に抱きつかれたあの時から考えが一掃された気がする。

理不尽な目に遭ってから何者かに襲われた挙句、異世界に行ってしまったものの、新しい体験や絆、関係、そして考え。それらを新たに得られた事を考えると、まだまだ俺にはやり切れないところがあるんだなと実感できた。


両親には幼い頃に色々迷惑をかけてしまい、挙句の果てにこんな事に巻き込んでしまったという罪悪感を謝罪したが、両親は

「私はそれらを感じてこその息子という存在だと思ってたから、謝らなくていいのよ」

そう言われた後、俺は心のどこかで『永遠の別れ』というものに対する悲しみをまた一つ、覚えた気がした。

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