EP.020
正月も終わり、桜が咲くような時期が近づいてきた。
「もうすぐかぁ...」
「もうすぐって?」
「いや、何でもない。その時になったら言うよ」
何を隠そう、俺はまだ完全に他界したわけではないのは確かだ。体に浮遊感を感じ始めて来ているのもあり、恐らく1週間の”帰省”というやつが来ているのだろう。
「まぁ、私もある程度は察しているけどね」
「まじで?なら言わなくてもわかるか...な?」
彼女は悲しそうな笑顔でハッと短いため息をつき、表情を変えずに
「1週間、会えなくなるなると考えるとやっぱり寂しいね」
「...だね」
俺は何とか感情を抑えていたが、涙声になってしまったが、そのまま返事した。耐え難い感情で気づいたら俺は俯いていた。
「ちゃんと、お土産持ってくるから」
何とか、頑張って涙を抑えたあと、正面を向くと、屈んで泣いている茜が居た。
声を抑えようとして肩が震えているのが、涙で滲んでいる視界からでもわかった。
数分、俺らは1週間の予定を話していた。
皆、俺のために色々用意すると言ってくれて、少し安堵した。
⦿ ⦿ ⦿ ⦿ ⦿
時間は流れるように過ぎ、当日となってしまった。
「じゃあ、そろそろだね」
俺は白いボヤで覆われた巨大な入場ゲートらしき場所の前でそう云った。
「また来週会おうね...!」
今まで泣いた姿をみたことのない楓が始めて泣いていた。
「なぁに...どうせ1週間なんてあっという間に終わっちゃうさ」
俺は自分でもそんな事ないと思っている事を云ってしまったが、彼女らは
「うん。ありがとう」
彼女らに励ましの声として届いたことに自分で言っておきながらも励ましになった気がした。
「まもなく発車しまぁす。ご利用の方はお急ぎくださぁい」
ゲートの向こうから車掌らしき声が聞こえた。
「じゃあ、また来週ね。あ、お土産楽しみにしててね!」
そう云って、俺は手を振りながら最後まで彼女たちの姿が見えなくなるまで彼女らの方を向いたままゲートに入った。
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